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花と歴史に酔いしれる!イギリスの格式高い庭園ベスト10

英国で絶対見逃せない、格式ある名園TOP10

貴族気分でお散歩を。英国の美しき豪邸庭園10選

英国に点在する数々の庭園は、単に四季折々の美しい花々や緑を楽しむ場所ではありません。それらは、何世紀もの時を超えて受け継がれてきたデザイン思想、技術の変遷、そしてその場所に関わった人々の夢や情熱が刻まれた、まさに「生きた歴史の証人」と言えるでしょう。

特に、壮麗な邸宅(ステイトリーホーム)と共に発展し、英国の歴史と文化を色濃く反映してきた格式ある名園には、訪れる者をまるで過去の時代へと誘(いざな)うような、深く、そして豊かな魅力が満ち溢れています。

この記事では、そんな英国の輝かしい庭園遺産の中から、まさに「歴史を旅する」というタイトルがふさわしい、訪れたならば絶対に後悔しない、絶対に見逃すことのできない珠玉の名園トップ10を厳選してご紹介します。

ご紹介するのは、17世紀バロック様式の驚異的なトピアリーが、まるで時が止まったかのように当時の姿をとどめるレヴェンス・ホール・ガーデンズ。18世紀に理想郷を追求して造られた、広大な風景式庭園の傑作ストアヘッドやキャッスル・ハワード。

ヴィクトリア朝時代の富と技術の粋を集めて築かれた、壮麗なワッデスドン・マナーや、息をのむ景観が広がるボドナント・ガーデン。一度は完全に忘れ去られながらも、奇跡の復活を遂げたロマンあふれるヘリガンの失われた庭園。

そして、20世紀に入り、個人の情熱と革新的なアイデアによって新たな庭園芸術の境地を切り開いた、シシングハースト・キャッスル・ガーデン、ヒドコート・マナー・ガーデン、グレート・ディクスター。さらには、植物学研究の世界的殿堂であり、それ自体が歴史的遺産でもあるロイヤル・ボタニック・ガーデンズ・キューまで。

これらの庭園は、単に美しいだけでなく、それぞれが異なる時代のデザイン哲学、社会背景、そして創り手たちの物語を秘めています。

訪問者は、その空間を歩くことで、まるで時間を遡るかのような感覚を味わい、英国史の様々な断面に触れることができるでしょう。さあ、英国が世界に誇る最高峰の名園を巡り、時代を超えて人々を魅了し続ける美と歴史の奥深さに触れる、忘れられない知的な旅へと出発しましょう。

シシングハースト・キャッスル・ガーデン

イングランド南東部、緑豊かなケント州の田園地帯に、世界で最も有名かつ影響力のある庭園のひとつ、シシングハースト城庭園(Sissinghurst Castle Garden)は静かに佇んでいます。

ここは単に美しい庭園というだけでなく、20世紀を代表する作家であり詩人でもあったヴィタ・サックヴィル=ウェストと、外交官であり作家でもあった夫ハロルド・ニコルソンが、1930年代に手に入れたエリザベス朝時代の城の廃墟を舞台に、彼らの情熱と比類なき芸術的感性を注ぎ込んで創り上げた、他に類を見ない特別な空間です。

この庭園の最大の魅力であり独創性は、ハロルドが設計した明確な幾何学的構造(フォーマルな骨格)と、ヴィタがその中に展開したロマンティックで時に奔放とも言える豊かな植栽(インフォーマルな肉付け)との、見事なまでの調和と対比にあります。

「ガーデン・ルーム」と呼ばれるコンセプトに基づき、高い生け垣や歴史を物語る古いレンガの壁によって巧みに区切られた一連の空間は、それぞれが独自のテーマカラー、植栽スタイル、そして雰囲気を持っています。訪れる者は、狭い通路やアーチを抜けるたびに全く新しい景色に出会い、まるで秘密の庭を次々と発見していくような、探検にも似た感動と喜びを味わうことができるでしょう。

数ある「部屋」の中でも、シシングハーストを象徴する存在として世界的に知られているのが「ホワイト・ガーデン」です。白、銀、そして緑色の植物のみで構成されたこのモノクロームの空間は、静謐でありながらも強い印象を与え、特に夕暮れ時や月明かりの下では、白い花々が幻想的に浮かび上がり、筆舌に尽くしがたい美しさを見せます。

この庭は世界中の数多くの庭園にインスピレーションを与え続けています。また、ヴィタの植物への深い愛情、特にバラへの情熱が凝縮された「ローズ・ガーデン」では、今では希少となったオールドローズ(古風なバラ)が、他の多年草や球根植物と共に、壁やアーチから溢れるように咲き誇り、6月には息をのむほどの美しさと香りで訪問者を魅了します。

対照的に、南コテージに隣接する「コテージ・ガーデン」のボーダー(花壇)は、赤、オレンジ、黄色といった鮮やかな暖色系の花々がエネルギッシュに咲き乱れ、生命力に満ち溢れています。

庭の中心にそびえ立つエリザベス朝時代の「タワー」は、庭園全体のランドマークであると同時に、上階へ登れば、ハロルドが意図した庭園全体の巧みな設計構造をパノラマビューで理解することができます。

さらに、かつてヴィタがここで数々の文学作品を執筆した書斎が、当時の面影を色濃く残したまま保存されており、彼女の知的な世界に触れる貴重な機会も提供されています。

その他にも、カモミールのベンチが置かれた香しい「ハーブ・ガーデン」、春にチューリップやヒヤシンスが足元を彩る整然とした「ライム・ウォーク」、近年修復され地中海の風景をモチーフにした「デロス」など、多様な魅力を持つ個性的なエリアが点在し、飽きることがありません。

ヴィタ・サックヴィル=ウェストの植栽スタイルは、色彩と質感に対する鋭い感受性に裏打ちされた、非常に直感的で豊かで詩的なものでした。彼女は植物が持つ自然な美しさを最大限に生かし、密集させることで豊潤さを演出し、時には自生した植物も風景の一部として取り込みながら、まるで絵画を描くかのように植物を組み合わせていきました。

シシングハースト城庭園は、単なる美しい庭園の枠を超え、サクソン時代に遡る土地の歴史、ヴィタ自身の文学的遺産、そして何よりも二人の創造者の深い関係性と人生が織りなす、重層的な物語を持つ場所です。

現在はナショナル・トラストによって meticulously (細心の注意を払って)管理されており、460エーカーに及ぶ広大な敷地には、庭園本体の他にも、散策が楽しめる森や湖、実際に稼働している農場も含まれています。20世紀英国庭園デザインの最高傑作として、そして園芸を愛する人々にとっての聖地として、今なお世界中の人々を魅了し続ける、訪れる価値のある比類なき園芸遺産と言えるでしょう。

グレート・ディクスター

イングランド南東部、趣のあるサセックス・ウィールド地方のライ近郊に位置するグレート・ディクスター(Great Dixter)は、初めて英国の庭園を訪れる方々にとって、まさに五感を揺さぶられるような、深く心に響く感動的な庭園体験を約束してくれる特別な場所です。

ここは、20世紀後半から21世紀初頭にかけて活躍した、高名な園芸家であり、数々の著作で知られる作家でもあった故クリストファー・ロイド氏が、その生涯をかけて情熱を注ぎ込み、独自の美学を追求した庭園として世界的に知られています。

建築家エドウィン・ラティンズによって巧みに拡張された魅力的な中世の館(邸宅)を取り囲むように広がる庭園は、建物とその外部空間が見事に一体となり、まるで絶えず対話しているかのような、他に類を見ない調和のとれた雰囲気を醸し出しています。

グレート・ディクスターの最大の魅力であり、世界中のガーデナーを惹きつけてやまない理由は、その大胆で実験的、そして常に進化し続ける植栽スタイルにあります。ロイド氏は、伝統的な庭園設計のルールや、決まりきった色彩理論に果敢に挑戦し、驚きと発見に満ちた、生命力あふれる組み合わせや、力強い色彩の対比を恐れることなく庭に取り入れました。

庭園の各エリアは、まるで絵画のパレットのように、珍しい植物の組み合わせや、目を見張るような鮮やかな色彩で溢れており、訪れるたびに新たな発見があるでしょう。

特に、春の繊細な芽吹きから晩秋の燃えるような紅葉まで、一年を通して庭園が常に最高の見頃を保つように緻密に計算された「継承植栽(サクセッション・プランティング)」の技術は、グレート・ディクスターが先駆的に実践し、世界に広めた特筆すべき手法です。様々な種類の植物が織りなす豊かなボーダー(帯状花壇)は、季節ごとに主役を変えながら、常に変化に富んだ美しい景観を見せてくれます。

園内を散策すると、訪問者は多様性に富んだ様々な「庭園の部屋」を発見することができます。英国式庭園の伝統を感じさせる、丁寧に刈り込まれた幾何学的なイチイ(Yew)のトピアリーがあるかと思えば、そのすぐ隣には、蝶や蜂などの昆虫が飛び交う、生物多様性に富んだ野草のメドウ(草原)が自然のままに広がり、またある場所では緑豊かな壁に囲まれた静かな沈床庭園(サンクン・ガーデン)や、大きな葉を持つ植物が集められたエキゾチックなトロピカル・コーナーなど、歩を進めるごとに全く異なる趣の景観が続きます。

庭園全体が、常に新しい手法を試みる園芸の革新性と、そこに生息する生き物たちとの共生を目指す生物多様性への深いコミットメントに貫かれており、珍しい品種の植物や、蝶や蜂などの重要な受粉昆虫を惹きつける工夫が随所に見られます。

ロイド氏自身が設立し、情熱を注いだ併設の苗床(ナーセリー)では、庭園で実際に育てられ、その環境で優れたパフォーマンスを見せた植物の苗を購入することもでき、自宅の庭づくりのヒントを得ることも可能です。

庭園だけでなく、歴史を感じさせる館の内部を見学できるのも、グレート・ディクスターの大きな魅力の一つです。知識豊富なガイドが、かつてここに暮らしたロイド一家の興味深い物語や、ラティンズによる建築デザインの独創性について語り、何世紀にもわたる英国の家庭生活の一端を垣間見せてくれます。敷地内にあるカフェでは、庭で採れた新鮮な季節の食材をふんだんに使った、素朴で美味しい手作りの料理を味わうこともでき、庭園散策の合間の休憩に最適です。

グレート・ディクスターは、単に美しい景観を提供する庭園であるだけでなく、世界中から園芸愛好家や専門家が集まり、学び、交流する、活気ある教育の拠点としても重要な役割を果たしています。

ヒドコート・マナー・ガーデン

 

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英国で最も美しく、そして世界中の庭園デザインに多大な影響を与えた場所を訪れるなら、風光明媚なコッツウォルズ地方の丘陵に静かに佇むヒドコート・マナー・ガーデン(Hidcote Manor Garden)は、まさに必見の場所と言えるでしょう。

ここは20世紀初頭に、アメリカ出身でありながら英国の園芸に情熱を注いだローレンス・ジョンストン少佐が、その生涯の多くを費やして創り上げた、アーツ・アンド・クラフツ様式を代表する庭園として世界的に高く評価されています。初めて英国の庭園を訪れる観光客の方々にとって、ヒドコートが提供する体験は、他では味わえない驚きと発見に満ちています。

この庭園の最も独創的で魅力的な特徴は、「ガーデン・ルーム(庭の部屋)」と呼ばれる巧みな空間構成にあります。ジョンストン少佐は、高く、そして緻密に刈り込まれたイチイ(ヨー)やブナ、ホルンビーム(シデ)といった様々な種類の生け垣や、趣のある石積みの壁を巧みに用いることによって、広大な敷地を約28もの異なる区画、すなわち「部屋」へと分割しました。

これらの部屋はそれぞれが独自の性格、例えば特定の色彩計画(カラー・スキーム)や植栽テーマ、そして醸し出す雰囲気を持っています。まるで大きな邸宅の内部を巡るかのように、訪問者は狭い通路やアーチを通り抜けるたびに、予期せぬ新しい景色や空間へと導かれます。

この連続する驚きと発見の感覚こそが、ヒドコート散策の最大の醍醐味なのです。清楚な白と銀の世界が広がる有名な「ホワイト・ガーデン」、鮮やかな色彩が溢れる「フクシア・ガーデン」、古代ローマの浴場を模した静謐な「ベイジング・プール・ガーデン」など、一つ一つの部屋が個性的であり、訪問者の記憶に深く刻まれる体験を提供します。

特に夏の終わりから秋にかけては、「レッド・ボーダーズ」と呼ばれる一対の長い花壇が見事なクライマックスを迎えます。ここでは、燃えるような赤、深紅、オレンジ、紫といった暖色系のダリア、サルビア、ゲウムなどが豊かに、そして密に植栽され、圧倒的な色彩と多様な質感が織りなす、力強くも美しい景観はまさに圧巻の一言です。

また、庭園の随所に配された、鳥や抽象的な幾何学模様など、熟練の職人技で見事に刈り込まれたイチイやボックス(ツゲ)のトピアリー(装飾刈り込み)は、庭園全体に建築的な構造とリズミカルなアクセント、そして芸術的な雰囲気を加えています。これらは美しい景色や次の部屋への入り口を効果的に縁取る役割も果たしています。

ジョンストン少佐は世界中を旅した熱心な植物収集家でもあったため、園内には彼が自ら集めた多くの珍しい植物や樹木が大切に育てられています。園芸に詳しい方にとっては、世界各地から集められた希少な植物コレクションは、まるで宝探しのような興味深い体験となるでしょう。ここで発見され、世界的に有名になったラベンダー‘ヒドコート’やバラ‘ローレンス・ジョンストン’といった園芸品種も数多く存在します。

ヒドコート・マナー・ガーデンは、アーツ・アンド・クラフツ運動の理想、すなわち、自然素材の美しさの尊重、丁寧な手仕事(クラフツマンシップ)へのこだわり、細部にまで行き届いた配慮、そして整然としたフォーマルなデザインと、その中に展開される自然主義的で豊かな植栽との見事な調和を、完璧な形で体現しています。

計算され尽くした小道の配置や、垣根の切れ間から望む周囲のコッツウォルズのなだらかな田園風景を借景として取り込んだ美しい眺望(ビスタ)も、庭園の魅力を一層高めています。庭園は17世紀のマナーハウスを取り囲むように広がり、レバノン杉などの堂々たる古木が点在する広々とした芝生エリアも、訪れる人々に安らぎの時間を提供してくれます。

英国の歴史的建造物や自然を保護するナショナル・トラストによって美しく維持管理されているこの庭園は、英国庭園デザインの金字塔として、またアーツ・アンド・クラフツ様式の粋を集めた場所として、世界中から訪れる人々を魅了し続けています。

ボドナント・ガーデン

北ウェールズの壮大な自然に抱かれたボドナント・ガーデン(Bodnant Garden)は、世界でも有数の園芸の楽園として国際的に知られています。コンウィ川を見下ろす美しい丘陵地に広がるその敷地は80エーカー(東京ドーム約7個分)もの広さを誇り、庭園の至る所から遠くにスノードニア国立公園の雄大な山並みを望むことができます。この息をのむような壮大な景観だけでも、ボドナントを訪れる価値は十分にあると言えるでしょう。

この庭園内で最も象徴的であり、世界中から人々を惹きつけてやまないのが、全長55メートルにも及ぶ見事な「ラバーナム・アーチ」(キングサリのアーチ)です。

春の終わり、通常は5月下旬から6月上旬にかけての短い期間ですが、このアーチは目も眩むほどの鮮やかな黄金色の花でびっしりと覆われ、まるで光り輝く黄金のトンネルのような幻想的な光景を創り出します。この奇跡のような美しさを一目見ようと、開花時期には数万人もの人々が国内外から訪れるほどの人気ぶりです。

しかし、ボドナント・ガーデンの魅力は、この有名なラバーナム・アーチだけにとどまりません。150年以上の長い歳月をかけて、世界中から情熱的に収集された驚くほど多様な植物コレクションと、それぞれが独自の魅力を持つテーマ別に設計された庭園エリアが、広大な敷地内に巧みに配置されています。

丘の上部には、フォーマルなデザインが美しいローズガーデンや、芳しいバラと地中海の植物が彩る壮麗なイタリア様式のテラスがあり、優雅な散策を楽しむことができます。

一方、深い谷間に下りていくと、「ザ・デル」と呼ばれる、シダや巨木が生い茂る神秘的な雰囲気の森の庭園が広がります。ここには英国でも有数の大きさを誇るチャンピオンツリー(名木)や、シャクナゲ(Rhododendron)やモクレン(Magnolia)など、英国のナショナル・コレクション(国の重要な植物コレクション)に指定されている貴重で美しい植物群を含む、色鮮やかな木々や下草が生い茂り、訪れる者を魅了します。

その他にも、可憐な野の花が風にそよぐメドウ(草原)や、清らかな水の流れと滝が心を癒す静かなウォーターガーデンなど、散策するエリアごとに異なる発見と感動が待っています。

ボドナント・ガーデンは、一年を通していつ訪れても、その季節ならではの美しい表情を見せてくれるのも大きな魅力です。春には、水仙やマグノリア、そしてもちろんラバーナム・アーチの黄金色が庭園を彩ります。

夏には、色とりどりのシャクナゲやアザレアが咲き誇り、池には優雅な睡蓮の花が浮かびます。秋には、カエデをはじめとする木々が燃えるように紅葉し、庭園全体が暖かい色彩に包まれます。そして冬でさえも、常緑樹の緑や美しい樹皮を持つ木々、冬咲きの花などが庭園に彩りを添え、静かな散策を楽しむことができます。

園内には、休憩に便利なティールームや、珍しい植物を購入できるガーデンセンター、お子様が楽しめる遊び場なども完備されており、またバリアフリーに対応した散策路も整備されているため、ご家族連れから熱心な園芸愛好家、風景写真家まで、あらゆるタイプの訪問者が快適に素晴らしい一日を過ごせるよう配慮されています。

ストアヘッド

 

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初めて英国を訪れる方々にとって、イングランド南西部ウィルトシャー州に広がるストアヘッド(Stourhead)は、世界で最も美しいと称賛されるランドスケープ・ガーデン(風景式庭園)の一つで、訪れる人々に忘れられない深い感動を与えてくれる特別な場所です。

ここは18世紀に、裕福な銀行家であり、芸術と自然を愛したヘンリー・ホアール2世が、自身の理想とする古代のアルカディア(理想郷)を地上に再現しようと情熱を注いで創り上げた、ピクチャレスク様式(絵画のような風景美を追求したスタイル)の最高傑作と言われています。

庭園の中心には、息をのむほど美しい、広大で壮麗な湖が静かに水をたたえています。ストアヘッドの設計の核心は、この湖を巧みに利用し、その周りを巡る周遊式の散策路にあります。

訪問者はこの小道をゆっくりと歩を進めることで、まるで完璧に構図が計算された「生きた風景画」のような景色が、次から次へと目の前に展開していくのを体験するのです。

道のりの要所要所には、古代ギリシャ・ローマ世界を思わせる古典様式の神殿(花の女神フローラに捧げられた神殿や、丘の上に荘厳に立つアポロ神殿など)、堂々たる佇まいのパンテオン(万神殿)、そして水辺には、探検心をくすぐる神秘的な雰囲気を醸し出す洞窟(グロット)や、湖面に優美な影を落とす象徴的なパッラーディオ様式の橋といった、数々の美しい建築物(フォーリー)が、まるで絵画の構成要素のように、湖や周囲の木々と見事に調和するように、計算し尽くされて配置されています。

これらの建築物が、単調になりがちな自然風景にアクセントを加え、視線を引きつけ、変化に富んだドラマティックな景観を創り出しているのです。

ホアール氏がグランドツアー(当時の貴族の子弟が行ったヨーロッパ大陸への修学旅行)で得た古典芸術や風景画からのインスピレーションが、庭園の隅々にまで反映されているのが見て取れます。

庭園は四季を通じて異なる魅力を見せてくれます。春には、湖畔のツツジ(アザレア)やシャクナゲ(ロードデンドロン)が一斉に咲き誇り、鮮やかな色彩で彩られます。

夏には深い緑が目に心地よく、秋には木々が燃えるような赤や黄金色に染まり、湖面に映る紅葉の景色もまた格別です. 冬には木々の骨格が現れ、静謐で荘厳な美しさを感じさせます。園内には世界中から集められた珍しい種類の樹木も多く植えられており、豊かな自然と植物の多様性も満喫することができます。

ストアヘッドは、効率的に見て回る場所というよりは、時間をかけてゆったりと散策し、その雰囲気に浸ることを促すようにデザインされています。湖のほとりに佇んで静かに景色を眺めたり、広々とした芝生の上でピクニックを楽しんだりするのも、この庭園ならではの贅沢な過ごし方です。神秘的な洞窟の中を探検してみるのも、ちょっとした冒険気分を味わえるでしょう。

さらに、この庭園を取り囲むストアヘッドの広大な敷地(エステート)には、古代からの森や、なだらかな白亜の丘陵地帯が広がり、遠い昔の鉄器時代の丘の砦跡や、晴れた日には遠く3つの州(カウンティ)まで見渡せるという壮大な眺望を誇るキング・アルフレッドの塔など、庭園本体以外にも魅力的な見どころが点在しており、より深く探索したい方にも十分な満足感を与えてくれます。

敷地内には、地元の食材を扱うファームショップや古書も扱うブックショップ、伝統的なパブ、お子様向けのプレイエリアなども整備されており、一日を通して快適に過ごすことができます。

キャッスル・ハワード

 

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英国北部、ヨークシャー地方の風光明媚なハワーディアン・ヒルズに広がるキャッスル・ハワード(Castle Howard)は、単に壮麗な歴史的邸宅というだけでなく、1,000エーカー(東京ドーム約85個分!)を超える広大な公園地、丹精込めて手入れされたフォーマルな庭園、きらめく湖、そして静寂に包まれた森の散策路が一体となった、英国で最も素晴らしい景観の一つとして高く称賛されています。その圧倒的なスケール感と、隅々まで計算され尽くした景観デザインは、訪れる人々を魅了し、深い感動を与えてくれることでしょう。

庭園エリアの中心で訪問者を堂々と迎えるのは、ギリシャ神話の巨人アトラスが天を支える姿をかたどった、ダイナミックな彫刻と高く噴き上げる水柱が印象的なアトラス噴水です。この象徴的な噴水は、広大な庭園全体の古典的な中心としての役割を見事に果たしています。

広大な敷地内を散策すると、遠景に美しいアクセントを加える「四風の神殿」や、一族の歴史を物語る荘厳な「霊廟(マウソレウム)」といった、絵画のように美しい建築物(フォーリー)が点在しており、これらが風景に歴史的なドラマと詩的な雰囲気を加えています。

散策の楽しみは尽きることがありません。春には、イングリッシュ・ブルーベルの青い絨毯が広がり、世界中から集められた珍しい樹木やシャクナゲ(ロードデンドロン)が植えられた「レイ・ウッド」と呼ばれる広大な森林庭園を歩けば、心地よい自然の息吹を感じることができます。

また、高い壁に囲まれた伝統的な「ウォールド・ガーデン」では、テーマごとに美しく植えられた花壇や、見事なバラのコレクション、そして見た目にも美しい装飾的な野菜畑などをじっくりと楽しむことができます。広大な「グレート・レイク」の周りをのんびりと散策したり、夏季にはボートに乗って湖上からの特別な景色を眺めたりするのも格別な体験です。

キャッスル・ハワードは、その比類なき壮麗さと美しさから、数多くの有名な映画やテレビドラマのロケ地としても選ばれてきました。特に、世界的に大ヒットしたNetflixドラマ『ブリジャートン家』や、英国貴族社会を描いた不朽の名作『華麗なる貴族』(Brideshead Revisited) の主要な舞台となったことで、これらの作品のファンにとっては、映像で見たあの憧れの風景の中に実際に足を踏み入れることができる、特別な感慨を覚える場所でもあります。

ご家族連れの訪問者にも配慮が行き届いており、「スケルフ・アイランド」と名付けられた、自然の地形を活かした冒険的な大型遊び場では、子供たちが森の中を駆け回り、思い切り体を動かして楽しむことができます。また、一年を通して季節ごとの特別イベントや、家族向けの庭園散策コースなども多数用意されており、あらゆる年齢層の訪問者が楽しめるような工夫が凝らされています。

レヴェンス・ホール・ガーデンズ

 

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英国庭園の中でも、他では決して味わうことのできない、まるで17世紀後半の世界に迷い込んだかのような、ユニークで魔法に満ちた時間旅行を体験したい方は、イングランド北西部、風光明媚な湖水地方の入り口に位置する「レヴェンス・ホール・ガーデンズ(Levens Hall Gardens)を強くお勧めいたします。

ここは、驚くほど見事に保存された、世界で最も古く、そして最も有名なトピアリー(樹木の装飾刈り込み)庭園を誇り、その歴史的重要性と他に類を見ない美しさで、国際的にその名を知られています。

この庭園が誕生したのは1694年。フランスのヴェルサイユ宮殿庭園を設計した偉大なアンドレ・ル・ノートルの下で学んだフランス人デザイナー、ギヨーム・ボーモンによって設計されました。

驚くべきことに、300年以上前に造られた当時の庭園の基本的なレイアウト(設計)が、ほぼ完全な形で今日まで大切に保存されており、これはヨーロッパの庭園史においても非常に貴重な存在となっています。

庭園の主役は、なんと言っても100を超える、息をのむほどに見事なトピアリー群です。イチイ(ヨー)やボックス(ツゲ)の木々が、長年にわたる丹念な剪定作業によって、まるで生きている彫刻のように、幻想的で、時にユーモラスでさえある様々な形に刈り込まれています。中には樹齢300年を超える古木もあり、歴史の重みを感じさせます。

「エリザベス女王とその侍女たち」や「大きな傘」といった物語性を感じさせるユニークな形から、チェスの駒のような遊び心のある形、あるいは抽象的で複雑な幾何学模様まで、そのデザインの多様性と芸術性の高さには、ただただ圧倒されるばかりです。これほど古く、これほど大規模で、これほど多様なデザインを持つトピアリーコレクションは、世界中を探しても他にはありません。

しかし、レヴェンス・ホールの魅力は、この素晴らしいトピアリーだけにとどまりません。約10エーカー(東京ドーム約1個分)の敷地内には、英国屈指の美しさと称賛される、色とりどりの花々が咲き誇る伝統的なハーブ(宿根草)のボーダー(帯状花壇)が広がっています。

手入れの行き届いた広大な芝生、春には可憐な花が咲き乱れる野草のメドウ(草原)、リンゴやプラムなどが実るロマンティックな雰囲気の果樹園、そして芳しい香りが漂うローズガーデンなど、トピアリーとは異なる魅力を持つ多様なエリアが訪問者を楽しませてくれます。

また、英国で最も古い記録が残る「ハハ」と呼ばれる、庭園の景色を遮ることなく家畜の侵入を防ぐために設けられた空堀(sunken fence)も、庭園史を語る上で重要な特徴の一つです。

巨大なブナの木々が円形に植えられた「ブナのサークル」や、リンゴの木々がトンネル状に仕立てられた通路、季節ごとに植え替えられるテーマ別の花壇、そして柳で作られた楽しい迷路や、庭のそこここにある隠れたコーナーなどが、散策に変化と発見の喜びを加えています。庭園はまた、敷地内で丹精込めて育てられた3万株以上もの一年草を用いた、季節ごとの壮大な花壇展示でも有名です。

庭園に隣接して建つレヴェンス・ホール自体も、エリザベス朝時代に建てられた非常に美しい、英国の重要文化財(グレードI指定)の邸宅であり、内部には英国最古とされる貴重なパッチワークキルトや、珍しいスペイン製の革壁紙、精巧な細工が施された時代の家具など、見応えのある歴史的な調度品が数多く残されています(邸宅内部の見学も可能です)。

敷地内には、地元カンブリア産の食材をふんだんに使った美味しい食事やアフタヌーンティーを提供する、受賞歴のあるレストラン「レヴェンス・キッチン」もあり、庭園散策と合わせて一日を通して楽しむことができます。

ザ・ロスト・ガーデンズ・オブ・ヘリガン

イングランド南西部、風光明媚なコーンウォール州のメヴァギシーという港町の近くに、英国で最も神秘的でロマンティックな庭園のひとつ、ヘリガンの失われた庭園(The Lost Gardens of Heligan)があります。初めて英国を訪れる方々にとって、ここはまるで時が止まった忘れられた物語の世界に足を踏み入れるような、他では決して味わえない魔法に満ちた特別な体験となるでしょう。

この庭園の名前が示す通り、200エーカー(東京ドーム約17個分)を超える広大な敷地は、かつてコーンウォール地方有数の大地主であったトレメイン家の邸宅庭園として栄華を誇りました。

しかし、第一次世界大戦で庭師の多くが戦地に赴き帰らぬ人となった後、徐々に荒廃し、数十年間もの長きにわたり、完全に自然に飲み込まれ、人々から忘れ去られた「失われた」存在となっていたのです。

それが1990年代に入り、偶然にも再発見され、多くの人々の情熱的な復元作業によって、かつてのヴィクトリア朝時代の栄光と、コーンウォールの豊かな自然が見事に融合した、感動的な現在の姿を取り戻しました。

園内を散策すると、その規模の大きさと風景の多様性に驚かされることでしょう。多くの訪問者にとってハイライトとなるのが、保護された深い谷間に広がる亜熱帯植物園、通称「ジャングル」です。

ここでは、巨大なシダ植物や、まるで恐竜時代の植物を思わせる巨大な葉を持つグンネラ(オニブキ)、高く伸びる竹、エキゾチックなヤシなどが鬱蒼と茂り、まるで別世界のような非日常的な雰囲気を醸し出しています。

その中を縫うように設置された高架の木道(ボードウォーク)を歩けば、探検家気分を味わえます。特に、谷間に架けられた揺れる「ビルマ・ロープ・ブリッジ」を渡る体験は、スリル満点で、子供だけでなく大人にとっても忘れられない冒険となるでしょう。

北側の庭園エリアに足を踏み入れると、ジャングルの雰囲気とは一転し、ヴィクトリア朝時代の洗練された庭園芸術の世界が広がります。かつての所有者であったトレメイン家の栄華を偲ばせる、美しく復元された「プレジャー・グラウンド」(観賞用庭園)には、歴史的な花々が咲くボーダー花壇や、地中海の植物が集められた「イタリアン・ガーデン」、精密なデザインが施された「日時計ガーデン」などがあり、当時の園芸技術と美意識の高さを今に伝えています。

さらに、広大な「エステート」(敷地)内の「プレジャー・グラウンド」や、何世紀もの時を刻んできた古代からの森を散策していると、ヘリガンの象徴として、また庭園の神秘的な精神を体現する存在として世界的に有名になった、ユニークなアート作品に出会うことができます。

それは、苔むした大地から穏やかな表情で姿を現す、眠れる女性像「マッド・メイド(泥の乙女)」と、地面から突き出した巨大な「ジャイアンツ・ヘッド(巨人の頭)」という、印象的なアース・スカルプチャー(土の彫刻)です。これらは絶好の写真スポットとしても人気を集めています。

また、ヘリガンは「生産庭園(プロダクティブ・ガーデン)」の丁寧な復元と運営にも力を入れています。ここでは、ヴィクトリア朝時代に実際に栽培されていた、今では珍しくなった伝統的な品種の果物や野菜が、昔ながらの持続可能な農法を用いて数百種類も育てられており、収穫物は敷地内のレストラン「ヘリガン・キッチン」で実際に味わうこともできます。

これは、生きた歴史と食、そしてサステナビリティ(持続可能性)を同時に体験できる貴重な場所と言えるでしょう。野生生物に関心のある方にとっては、希少種や野鳥、コウモリなどのために多様な生息環境を積極的に保全・管理している点も、ヘリガンの大きな魅力の一つです。

ヘリガンは、子供たちが自然の中で楽しめる遊び場や、可愛らしい農場の動物たちとのふれあいの場、静かな森の散策路なども整備されており、園芸の宝庫としての学術的な魅力と壮大な景観が、あらゆる年齢層の訪問者を温かく迎え入れてくれます。

ロイヤル・ボタニック・ガーデンズ・キュー

 

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ロンドンの中心部からもアクセスしやすい場所に位置する「ロイヤル・ボタニック・ガーデンズ・キュー(Royal Botanic Gardens, Kew)」は、初めて英国を訪れる観光客の方々にとって、自然の美しさ、豊かな歴史、そして最先端の科学的発見が融合した、まさに圧倒的な魅力を持つ必見の観光スポットです。

通称キューガーデンは、単なる美しい庭園という枠を超え、ユネスコ世界遺産にも登録されているこの場所は、世界でも最高峰の植物園として国際的に認められています。

300エーカー(東京ドーム約25個分以上)を超える広大な敷地には、息をのむほど多様性に富んだ植物コレクションが収蔵・展示されており、その数は実に5万種以上にも及びます。園内に植えられている1万4千本以上の樹木の中には、18世紀にまで歴史を遡る貴重な古木も含まれており、ここはまさに「生きた植物の巨大な博物館」と言えるでしょう。

キューガーデンを訪れたら、まず見逃せないのが、その象徴とも言える壮麗なヴィクトリア朝時代のガラス温室群です。特に有名な「パームハウス」に一歩足を踏み入れると、そこはまるで本物の熱帯雨林。高温多湿の空気の中、世界中から集められた珍しいヤシやシダ、食虫植物などが力強く生い茂る姿は圧巻です。

そして、現存する世界最大のヴィクトリア朝様式の温室である「テンペレートハウス」には、世界各地の温帯地域から集められた1万種以上もの希少な植物が、その壮大な空間の中で大切に育てられており、その規模と美しさには誰もが驚かされるはずです。

地上18メートルの高さに設置されたドラマチックな「ツリートップ・ウォークウェイ」を歩けば、まるで鳥になったかのようなユニークな視点から、緑豊かな庭園のパノラマと、普段は見ることのできない木々の頂上部分(樹冠)の生態系を間近に観察することができます。

また、「ザ・ハイブ」と呼ばれる巨大な現代アートのような施設では、ミツバチの巣の中の世界を光と音と振動で体感できる、没入型のマルチセンサリー・インスタレーションが人気を集めています。

広大な敷地内には、その他にも見どころが満載です。世界中の希少な樹木や歴史的な古木が集められた広大な「アーボレタム(樹木園)」、近代的なデザインの建物の中で繊細な高山植物を鑑賞できる「アルパイン・ハウス」、そして夏には色とりどりの花々が壮観な景観を作り出す「グレート・ブロード・ウォーク・ボーダーズ」(長い帯状花壇)など、散策するだけでも一日では足りないほどです。

敷地内には、かつて王族が暮らした歴史的な「キュー宮殿」や、東洋の雰囲気を醸し出す10層建ての「グレート・パゴダ(大仏塔)」、シャーロット王妃の質素な隠れ家であった「クイーン・シャーロットのコテージ」といった歴史的建造物も点在し、庭園散策に豊かな彩りと歴史の深みを加えています。

キューガーデンは、ただ美しい植物を鑑賞するだけの場所ではありません。ここは、地球規模での植物研究と環境保全活動をリードする、世界有数の重要な科学研究機関でもあるのです。その活動の一端に触れることができるのも、キューガーデン訪問の魅力の一つと言えるでしょう。

年間を通じて、季節ごとの特別展示や、音楽フェスティバル、専門家による興味深いガイド付きツアーなど、あらゆる年齢層の訪問者が楽しめる豊富なイベントカレンダーも用意されています。

植物を深く愛する方はもちろん、お子様連れで教育的な一日を過ごしたいご家族、歴史的な建築やアートに関心のある方まで、キューガーデンは誰もが満足できる多様な魅力を持っています。

春の桜やチューリップの見事な開花から、秋の燃えるような紅葉、そして冬に開催される幻想的なイルミネーションイベント「クリスマス・アット・キュー」まで、訪れる季節ごとに異なる美しい表情を発見できるキューガーデンは、ロンドン観光において忘れられない、豊かで知的な一日を約束してくれることでしょう。

ワッデスドン・マナー

 

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英国バッキンガムシャー州の美しい丘陵地帯に佇むワッデスドン・マナー(Waddesdon Manor)は、初めて英国を訪れる方々にとって、まるでフランスのおとぎ話の世界に迷い込んだかのような、魔法に満ちた特別な一日を約束してくれる壮麗な場所です。

ここは、19世紀末にヨーロッパの著名な銀行家一族であるロスチャイルド家の一員、フェルディナンド・ド・ロスチャイルド男爵が、フランス・ルネサンス様式の壮麗なシャトー(城館)を建設すると共に創り上げた、ヴィクトリア朝時代の庭園デザインの傑作として知られています。

細心の注意を払って美しく復元・維持されている庭園は、その豪華で整然としたフォーマルなレイアウトと、季節ごとに移り変わる鮮やかな花々の見事なディスプレイで、世界中から訪れる人々を魅了し続けています。

この庭園訪問における最大のハイライトと言えるのが、シャトーの南テラスから見下ろすことができる広大なフランス様式の整形式庭園、「パルテール」です。ここはまさに「生きたモザイク画」と呼ぶにふさわしく、一年間に二度、春と夏に、実に10万株以上もの色とりどりの草花が、熟練の庭師たちの手によって丹念に植え替えられます。

これにより、季節ごとに息をのむほど美しく、そして複雑で見事な模様と色彩が地面に描き出されるのです。「カーペット・ベディング」や「リボン・ベディング」と呼ばれる、ヴィクトリア朝時代に流行した精緻な花壇デザインの技術が駆使されており、中央には壮麗な噴水が配置され、周囲の広大な芝生と成熟した木々が、この華やかな庭園を一層引き立てています。

しかし、ワッデスドンの庭園の魅力は、この壮大なパルテールだけではありません。敷地内には、他にも様々な趣の異なる魅力的なエリアが点在しています。

ヴィクトリア朝時代の姿に美しく復元された「エイヴィアリー・ガーデン(鳥小屋のある庭園)」では、色鮮やかな珍しい鳥たちが飼育されており、庭園内に置かれたオリジナルの優美なロココ様式の彫刻コレクションも楽しむことができます。

一方、「ウォーター・ガーデン」は、連なる湖や滝、そしてヴィクトリア時代に流行した精巧な人工岩「プルハム・ロック」が織りなす自然主義的な景観が特徴で、静かな散策や、池に集まる水鳥たちの姿を眺めるのに最適な、心安らぐ空間となっています。芳しい香りが漂う「ローズ・ガーデン」や、春には一面が黄色い絨毯となるスイセンの谷なども、散策の楽しみを加えてくれます。

ワッデスドンの広大な公園地(パークランド)には、英国の古代からの古木や、遠く北米から持ち込まれたジャイアントセコイア、威厳あるアトラスシダーといった世界各地からの希少で印象的な樹木を含む、驚くべき樹木コレクションが点在しています。

これらを巡る「トレメンダス・ツリー・トレイル」を歩けば、その雄大で荘厳な姿を間近に感じることができます。また、庭園の敷地内には、歴史的な価値を持つ彫像から現代アーティストによる彫刻作品までが巧みに配置されており、芸術愛好家の目も楽しませてくれます。時には、庭園とシャトー内の美術コレクションを結びつけるテーマ別の特別展覧会が開催されることもあります。

ご家族連れの訪問者にも十分配慮されており、子供たちが思い切り体を動かして遊べる冒険的な遊び場や、季節ごとに企画される楽しいトレイル、様々な家族向けのアクティビティが用意されており、あらゆる年齢層が一日を通して満喫できるよう工夫されています。

敷地内には複数のカフェやレストラン、ギフトショップも充実しており、美しい庭園散策の合間に美味しい食事を楽しんだり、ユニークなお土産を探したりすることもできます。

まとめ

英国の庭園文化は世界に誇るべき遺産であり、今回ご紹介した10の庭園はその最高峰を体現しています。シシングハースト・キャッスル・ガーデンの詩的な白の庭から、グレート・ディクスターの大胆な色彩の実験、ヒドコット・マナー・ガーデンの卓越した「部屋」の概念まで、各庭園はそれぞれが独自の物語と美学を持っています。

ボドナント・ガーデンのラブルノム・アーチの黄金の雨、ストアヘッドの古典的な風景式庭園、キャッスル・ハワードの壮大なスケール感は訪問者を別世界へと誘います。レベンズ・ホール・ガーデンの400年以上続く精緻な刈り込み庭園、ヘリガンの「失われた庭園」の再発見の魔法、そしてキュー王立植物園の科学的重要性と美しさの融合は、庭園芸術の多様性を示しています。

ワズデスドン・マナーの洗練されたフォーマルガーデンで締めくくられるこの旅は、単なる観光以上の意味を持ちます。これらの庭園を訪れることは、過去の偉大な園芸家たちの情熱と創造性への敬意を表すことであり、今もなお発展し続ける生きた芸術形態を体験することです。

季節ごとに表情を変え、来訪者に新たな驚きを提供するこれらの庭園は、自然と人間の創造性が完璧に調和した姿を見せてくれます。忙しい現代生活の中で、これらの場所は静寂と内省の空間を提供し、心を癒し、インスピレーションを与えてくれるでしょう。

時間をかけて育まれた英国庭園の伝統は、過去の知恵を継承しながらも常に革新を続けています。この10の庭園への旅は、園芸の歴史への旅であると同時に、未来への希望の種を見つける旅でもあるのです。英国庭園の真髄を体験するために、ぜひこれらの宝石のような場所を訪れ、その魔法に身を委ねてみてください。

EMEA(欧州・中東)担当 at 

アンティークバイヤーのみさきです。好きな言葉は「百聞は一見に如かず」



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