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アメリカ移住前に要チェック!最も住みにくい州10選

全米データで判明!住みにくい州ワースト10

えっ、ここも?住むのがツラいアメリカの州

アメリカへの移住を考える多くの人にとって、「どの州を選ぶか」という判断は将来の生活の質を左右する重要な決断です。全米50州には、それぞれ独自の文化、経済状況、気候、教育システム、医療サービスがあり、これらの要素が総合的に「住みやすさ」を決定します。

移住先を選ぶ際には、メディアで喧伝される華やかなイメージだけでなく、実際の生活環境を冷静に評価することが不可欠です。特に海外からの移住者にとって、生活コストの高さ、インフラの整備状況、犯罪率、雇用機会、公共サービスの質などは見落としがちな要素ですが、日常生活において大きな影響を与えます。

本記事では、様々な統計データや住民調査を基に、住みにくさの観点から注意が必要な10州を紹介します。ルイジアナ州、ミシシッピ州、ニューメキシコ州、ウェスト・バージニア州、アラバマ州、ネバダ州、アーカンソー州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、ケンタッキー州がリストアップされていますが、これらの州が「悪い」というわけではありません。

それぞれの州には独自の魅力や特色があり、個人の価値観や優先事項によっては理想的な移住先となる可能性もあります。例えば、自然環境を重視する人にとっては、都市インフラが整っていなくても、美しい風景や静かな環境が魅力的に映るかもしれません。

このランキングは、教育、医療、経済、治安、インフラなど複数の要素を総合的に評価したものであり、移住を検討する際の参考情報としてご活用ください。

ルイジアナ州

豊かな文化、音楽、食、そして温かい人々が魅力のルイジアナですが、同時に、移住を決断される前に知っておくべきいくつかの重要な課題も抱えています。

まず、経済状況についてです。ルイジアナ州は、残念ながら全米で最も貧困率が高い州の一つとして知られています。2022年のデータでは、州民の約18.6%が貧困線以下の生活を送っており、この数字は子供たちに限ると24.4%にまで上昇します。

これは全米で3番目に高い水準です。世帯収入の中央値も約55,416ドルと、全米で下から3番目の低さであり、特に黒人世帯(貧困率29.4%)やヒスパニック世帯(同20.3%)において経済的な困難が顕著です。

州全体のGDPは2023年に5%増加しましたが、経済回復のペースは依然として緩やかであり、今後数年間も穏やかな成長に留まると予測されています。移住後の就労や生活設計においては、このような経済状況を考慮に入れる必要があるでしょう。

次に、健康と医療の問題です。ルイジアナ州は住民の健康指標において、深刻な課題を抱えています。特に肥満率は高く、成人の40%以上が肥満とされており、これは全米でも最も高いレベルです。

背景には、食生活の習慣や、ファーストフード店が多く利用しやすい環境などが指摘されています。また、糖尿病と診断された成人の割合は約13.2%にのぼり、これによる医療費負担や生産性の損失は年間70億ドルにも達すると推計されています。

心臓疾患による死亡率も高く、人口10万人あたり235.5人と、全国平均を35%以上も上回っています。これらの健康問題は、個人の生活の質だけでなく、州全体の医療システムにも大きな負荷を与えています。

教育システムに関しては、課題と改善の両面が見られます。歴史的に資金不足や学力成果の低迷が指摘されてきましたが、近年、特に初等教育において顕著な改善が見られています。

具体的には、小学4年生の読解力と算数の成績が向上しており、読解力の伸び率は2回連続で全米トップとなりました。これは、質の高い教材の導入、教師への継続的な研修、そして個別指導の強化といった近年の教育改革が実を結び始めている証拠と言えるでしょう。しかし、州全体の教育水準をさらに引き上げるためには、今後も継続的な努力が求められます。

ルイジアナ州の地理的な位置から、自然災害、特にハリケーンや洪水に対する脆弱性は無視できません。メキシコ湾に面しているため、毎年のようにハリケーンの脅威に晒されます。

1980年から2025年の間に、それぞれ10億ドル以上の損害をもたらした気象災害は106件にものぼり、2021年のハリケーン「アイダ」や2020年の「ローラ」は、広範囲にわたる家屋やインフラの破壊を引き起こしました。

海面水温の上昇など気候変動の影響により、今後もハリケーンシーズンの活動が活発化する可能性が指摘されており、住民は常に災害への備えを意識する必要があります。

これに関連して、インフラ、特に洪水対策も重要な課題です。海面上昇や既存の排水システムの能力不足により、沿岸部だけでなく内陸部でも洪水が頻繁に発生しています。

しかし、この問題に対して州や連邦政府は対策を進めています。高度な水理モデリングを用いた洪水予測システムの改善や、排水路の整備、堤防の強化といったインフラのアップグレードが進められています。

また、連邦政府からの資金援助により、洪水リスクの高い住宅の嵩上げや、非常用発電機の設置といった具体的な洪水緩和プロジェクトも実施されており、将来的な被害軽減への取り組みが続けられています。

このように、ルイジアナ州は経済的な困難、深刻な健康問題、高い自然災害リスク、そして教育やインフラにおける課題を抱えています。これらの複合的な要因が、生活の質に関するランキングで低い評価を受ける背景となっています。

しかし、同時に、経済の多様化と近代化を目指す新たな産業イニシアティブ、教育分野で見られる確かな改善の兆し、そして自然災害への耐性を高めるための継続的な投資など、課題克服に向けた前向きな動きも存在します。

ミシシッピ州

アメリカ南部の伝統や文化が色濃く残ることから「南部の心(Heart of the South)」とも称されるミシシッピ州は、豊かな音楽遺産、温かい人々、そして美しい自然景観で知られています。

しかし、この魅力的な州での新しい生活を始めるにあたっては、その魅力だけでなく、生活の基盤に関わるいくつかの重要な課題についても深く理解しておくことが不可欠です。

まず、日常生活に直結するインフラの問題から見ていきましょう。残念ながら、ミシシッピ州のインフラは全体的に老朽化が進んでおり、2024年の総合評価は「C-」と、依然として多くの課題を抱えていることを示しています。

特に道路網については、全体の約24%が劣悪な状態にあるとされ、年間で修復されるのはそのうちのわずか5%程度に留まっており、改善には長い時間が必要です。

橋梁の状態はわずかながら改善評価(「D-」から「D+」へ)が見られましたが、依然として注意が必要なレベルです。さらに深刻な統計として、ミシシッピ州は全米で最も高い交通事故死亡率を記録しており、人口10万人あたり年間25人が亡くなっています。そのうち43%が飲酒運転に関連しているという事実は、交通安全における大きな課題を示唆しています。

道路以上に深刻なのが、水道インフラの現状です。浄水処理された飲料水の実に30%以上が、配管からの漏水によって失われていると推計されており、これは業界標準の2倍を超える異常な数値です。

州都ジャクソン市においては、この損失率が40%を超えるという事態に至っています。この問題は、2020年と2022年にジャクソン市を襲った深刻な水危機によって、州全体、そして全米の注目を集めることとなりました。

度重なる洪水や嵐により、市の主要な水道施設が甚大な被害を受け、浄水処理機能が停止。結果として、約18万人の住民が1ヶ月以上にわたり、安全な飲料水を確保できない状況に陥りました。時には汚染された水が供給される事態も発生し、市は何年もの間、水道に関して「常時非常事態」とも言える状況下にあります。

これは、数十年にわたるインフラへの投資不足とメンテナンスの遅延が招いた、システム的な問題の表れと言えるでしょう。連邦政府からの超党派インフラ法による資金援助(約4億2500万ドル)が決定しましたが、この巨額の資金が、最も緊急性の高い修復・改善に迅速かつ効果的に投入されるかどうかが、今後の大きな焦点となります。

州全体で見ても、今後20年間で約80億ドルもの水道システムへの投資が必要と試算されており、問題の根深さと解決への道のりの長さを物語っています。

経済面に目を向けると、ミシシッピ州は長年にわたり、全米で最も高い水準の貧困率に苦しんでいます。2023年時点でも、住民の18%が貧困線以下の生活を強いられており、これは全国平均を大幅に上回る厳しい現実です。

過去には24%を超えた時期もありましたが、依然として改善は道半ばと言えます。世帯収入の中央値も全米で最も低い水準にあり、経済的な格差は大きく、人々がより良い生活を目指す上での機会を制限する要因となっています。

これに関連し、特にマイノリティのコミュニティにおいては、質の高い医療へのアクセス、教育機会、経済的なチャンスといった面で、制度的な不公平が根強く残っているとの指摘もあります。

一方で、教育分野は、ミシシッピ州が抱える課題と、近年達成した目覚ましい成果が共存する領域です。公立学校は、過去16年間にわたり州の定める基準を満たさない慢性的な資金不足の状態が続き、その累積不足額は35億ドルにも達しました。

しかし、最近の重要な法改正により、「ミシシッピ州生徒資金調達方式(MSFF)」が導入され、数十年ぶりに州の基準を満たす十分な資金が公立学校システムに供給される見込みとなりました。

この長年の資金不足という逆境にもかかわらず、ミシシッピ州の生徒たちは、特に初等教育において驚くべき学力向上を達成しています。2013年以降、小学4年生の読解力と算数の成績向上率は全米第1位を記録し続けているのです。

この目覚ましい成果は、マイノリティの生徒たちにも及んでいます。黒人の4年生は読解力・算数ともに全米第3位、ヒスパニック系の4年生に至っては読解力で全米第1位、算数で第2位と、非常に高い学力レベルを示しています。

さらに、高校の卒業率も過去最高を更新し、全国平均を上回る水準に達しました。これらのデータは、困難な状況下でも教育改革への真摯な取り組みが実を結び始めていることを示唆しています。ただし、中学校(8年生)レベルの成績は改善傾向にあるものの、依然として全国平均を下回っており、初等教育での成果を中学・高校へと繋げていくことが今後の課題です。

結論として、ミシシッピ州が生活の質に関するランキングで低い評価を受ける背景には、老朽化し機能不全に陥っているインフラ(特に水道)、ジャクソン市で顕在化した深刻な水危機、根強い貧困と低い所得水準、そして社会的な不公平といった、深刻かつ構造的な問題が存在します。

しかし、同時に、教育分野、とりわけ初等教育においては、困難な財政状況の中から全米トップクラスの学力向上を達成するという、注目すべきポジティブな側面も持っています。

ミシシッピへの移住を検討される際には、これらの光と影、すなわち、日常生活に直接影響を及ぼす可能性のあるインフラや経済の課題と、将来への希望を感じさせる教育の成果の両方を十分に理解し、ご自身の価値観や優先順位と照らし合わせて、総合的に判断されることが肝要です。

州が進める改革や改善への取り組みが、今後どのように住民の生活の質を着実に向上させていくのか、注意深く見守る必要もあるでしょう。

ニューメキシコ州

その不思議な魅力から「魅惑の地(Land of Enchantment)」という愛称で知られるニューメキシコ州は、その名の通り、多様な文化が織りなす豊かな歴史、息をのむほど美しい広大な自然景観、そして活気に満ちたアートコミュニティで、訪れる人々、そして住む人々を魅了し続けています。

しかし、このユニークな魅力を持つ土地での新しい生活を具体的に思い描く際には、その輝かしい側面と同時に、州が現在直面しているいくつかの重要な課題についても深く理解しておくことが不可欠です。

まず、ニューメキシコ州が抱える最も深刻な課題の一つとして、残念ながら高い犯罪率が挙げられます。統計データは厳しい現実を示しており、ニューメキシコ州は全米で最も暴力犯罪率が高い州の一つです。

2022年には、人口10万人あたり780件の暴力犯罪が発生しました。これは、全米平均(381件)の2倍以上にあたる極めて高い数値です。

さらに憂慮すべきは、過去10年間(2012年~2022年)において、全米の暴力犯罪発生率が2%減少したのに対し、ニューメキシコ州では40%も増加しているという事実です。

銃による暴力も深刻な問題であり、2011年から2023年の間に銃器関連の死亡者数は71%増加し、州は年齢調整後の銃器死亡率で全米第5位という不名誉なランクに位置しています。

2019年から2023年の間だけでも、銃器が関与した殺人事件は35%増加しました。再犯率の高さや検挙率の低さが、治安に対する住民の不安感を増幅させている側面も指摘されています。

州や郡レベルでは、暴力犯罪削減に向けた特別作戦などが実施され、逮捕者数や銃器の押収といった成果は報告されていますが、州全体の犯罪率を根本的に改善するには至っていないのが現状です。移住を検討される際には、希望する地域の具体的な治安状況について、最新の情報を入念に調査することが極めて重要となります。

次に、医療へのアクセスに関する課題についてです。ニューメキシコ州では、医師、看護師、そして特定の専門分野の医師を含む医療従事者の数が、州全体の人口に対して深刻に不足しています。特に懸念されるのは、現在州内で診療にあたっている医師の約40%が60歳以上であり、今後10年以内に多くが退職すると見込まれている点です。

実際に、2017年から2021年のわずか4年間で、一般開業医の数は30%も減少しました。一方で、ニューメキシコ州民の約半数が公的医療保険制度であるメディケイドに加入していますが、医療機関がメディケイドから受け取る診療報酬が、実際の医療コストを十分にカバーできない場合が多いという問題があります。

これが、病院の経営難や閉鎖、新たな医療スタッフの確保を困難にし、結果として住民が必要な医療を受けにくくなる一因となっています。また、道路網などのインフラの問題も、特に広大な面積を持つ農村部において、医療機関へのアクセスを物理的に困難にしています。

しかし、州はこの問題の改善に向けて動き出しています。メディケイドの医療従事者への報酬率を引き上げる(メディケア基準の最大150%まで)といった具体的な改革や、メディケイドプログラムを安定させるための恒久的な信託基金を創設する法案(上院法案88)の検討など、医療アクセスの改善を目指した政策が進められています。

経済面においては、いくつかの課題と特徴が見られます。2025年2月時点でのニューメキシコ州の失業率は4.4%であり、これは全国平均(4.1%)をわずかに上回る水準です。

ただし、これは州全体の平均値であり、地域による格差が大きい点には注意が必要です。例えば、ルナ郡のような一部の農村地域では失業率が15%を超えるなど、非常に厳しい経済状況に置かれている場所も存在します。

州経済の構造的な特徴として、石油や天然ガスといった資源採掘産業への依存度が高いことが挙げられます。これは、時に州に大きな歳入をもたらしますが、一方でエネルギー価格の変動など、外部要因による景気の波に経済全体が左右されやすいという脆弱性も抱えています。

この状況を改善するため、州は「経済開発戦略計画」を策定し、技術革新や新たな産業の育成、起業家精神の奨励などを通じて、経済の多様化と安定化を図る取り組みを進めています。また、前述のインフラの問題は、経済活動の活性化や新たな企業の誘致においても障壁となることがあり、その改善も経済発展のための重要な要素となっています。

ここまでニューメキシコ州が抱える課題を中心に述べてきましたが、移住を考える上で魅力となるポジティブな側面も存在します。その一つが、生活費が比較的低いことです。

州全体の生活費は全国平均よりも約5%低く、特に住居費に関しては全国平均を8%下回っています。これは、日々の暮らしにおける経済的な負担を軽減する上で、大きなメリットとなり得ます。

また、先述した医療改革や経済の多様化に向けた州の取り組みが、今後どのように実を結び、州民の生活の質を向上させていくのか、その進展も注目すべき点です。

ウェスト・バージニア州

「山の州(Mountain State)」という愛称が示す通り、ウェスト・バージニア州はアパラチア山脈が織りなす雄大な自然景観と、四季折々のアウトドア・アクティビティを楽しめる豊かな環境で知られています。

この美しい州での新たな生活に夢を馳せる方も多いことでしょう。しかし、その魅力的な側面と同時に、州が直面しているいくつかの重要な生活基盤に関わる課題についても深く理解しておくことが、移住を成功させるためには不可欠です。

まず、日常生活や経済活動の根幹をなすインフラ、特に道路網の状態についてです。2025年に発表されたTRIPレポートによると、州内の主要な道路の約3分の1(33%)が「状態が悪い」または「普通(Poor or Mediocre)」と評価されており、安全かつ効率的な移動に支障をきたしています。

州は「Roads to Prosperity」といった総額16億ドル規模のインフラ改善計画を進めていますが、近年の建設コストの急激な高騰(2022年以降で45%増)が計画の進捗を妨げ、多くの道路や橋が依然として修繕が必要な状態のままです。

モーガンタウンのような比較的人口が多く経済的に成長している都市部でさえ、必要なインフラ整備のための資金が不足しているという声が上がっており、地域間の格差も課題となっています。

このような交通インフラの不備は、単に日々の移動が不便になるだけでなく、物資の輸送コストを増加させ、企業活動や地域経済の発展、そして住民の生活の質そのものにも悪影響を及ぼしています。

次に、経済状況に目を向けると、ウェスト・バージニア州は残念ながら長年にわたり経済的な困難に直面しています。2023年の貧困率は16.7%と高く、これは全国平均(11.1%)を大幅に上回る水準です。

特に未来を担う子供たちの貧困は深刻で、州内の子供の約5人に1人(20.1%)が貧困線以下の生活を強いられており、これは全米で8番目に高い割合にあたります。

さらに、州の労働力参加率(就労または求職中の16歳以上の人口の割合)は55%強と、全米で最も低い水準にあり、この厳しい状況は1976年から半世紀近くも続いています。

この背景には、州民の平均年齢が全国的に見て高いこと(高齢化の進行)と、働き盛りであるはずの25歳から54歳の層に対する魅力的な雇用機会が州内に限られているという現実があります。

収入面でも状況は厳しく、世帯収入の中央値は55,948ドルと全米で最も低く、全国平均(80,610ドル)とは約25,000ドルもの差があります。こうした経済的苦境の根底には、州経済が歴史的に石炭採掘などの特定の資源産業に大きく依存してきたこと、そしてそれらの産業が時代の変化とともに衰退傾向にあるという構造的な問題が存在します。

医療へのアクセスも、ウェスト・バージニア州、特に広大な農村地域に住む人々にとって大きな課題となっています。州全体で医療従事者の数が不足しており、推計では医師が約14%、正看護師に至っては約19%も足りていません。

この人材不足は、多くの郡で病院が一つも存在しないといった状況を生み出しています。さらに追い打ちをかけるように、過去3年間で州内の救急医療サービス(EMS)を提供する機関が22箇所も閉鎖に追い込まれ、緊急時に迅速かつ適切な医療を受けることが一層困難になっています。

救急車の不足や、数少ない病院での長い待ち時間も、この問題をさらに悪化させています。加えて、住民の健康状態そのものにも課題があり、肥満率や喫煙率が全米でも特に高い水準にあることが、糖尿病や心臓病といった慢性疾患の有病率の高さにつながっています。

ただし、こうした状況を改善しようとする動きもあります。例えば、州内最大の医療提供者であるWVUメディスンが、エルキンス・コリドー・メディカル・センターのような新しい先進的な医療施設を、これまで医療サービスが十分でなかった地域に開設するなど、医療アクセスの格差是正に向けた取り組みが進められています。

これらの主要な課題に加えて、ウェストバージニア州は全米でも有数の高齢化が進んだ州で、これが医療サービスへの需要を増大させる一方で、労働力のさらなる減少を招くという、将来に向けた構造的な懸念も抱えています。

しかし、州はこれらの課題に対して手をこまねいているわけではありません。前述のインフラ投資計画に加え、モーガンタウン近郊の高速道路I-68における橋の拡張工事など、具体的なインフラ改善プロジェクトが進行中です。

医療面でも、WVUメディスンのような主要機関による施設拡張やサービス拡充が進められています。経済面では、従来の石炭依存型経済から脱却し、新たな成長分野を開拓するための経済多様化戦略が策定され、実行に移されています。

アラバマ州

アメリカ南部を象徴する州という意味合いから「南部の心臓部(Heart of Dixie)」という愛称で親しまれるアラバマ州は、豊かな歴史と文化、温暖な気候、そして南部特有の温かいホスピタリティで知られています。美しいガルフコーストのビーチからアパラチア山脈の麓まで、多様な自然環境も魅力です。

しかし、この魅力あふれる州での新しい生活を具体的に考える際には、その輝かしい側面だけでなく、州が抱えるいくつかの重要な生活基盤に関わる課題についても深く理解しておくことが不可欠です。

まず、州民の健康と医療アクセスに関する課題から見ていきましょう。残念ながら、アラバマ州は住民の健康状態を示す多くの指標で、全米平均を下回る状況にあります。

特に肥満率は全米で7番目に高く、これに関連して糖尿病、高血圧、心臓病といった生活習慣病の有病率も高い水準です。事実、州内の死因の上位をこれらの慢性疾患が占めており、心臓病による死亡率は人口10万人あたり147.5人と、憂慮すべき高さです。

このような状況にもかかわらず、アラバマ州は、低所得者向けの公的医療保険であるメディケイドの適用範囲を拡大していない、全米で10州しかないうちの一つです。

この政策決定により、働く意思がありながらも十分な収入がなく、民間の医療保険に加入できない約20万人の州民が、手頃な価格の医療から取り残される「保険の谷間」に置かれています。

さらに、このメディケイド拡大の見送りは、財政的に脆弱な農村部の病院経営を直撃し、州内の半数以上の農村病院が閉鎖の危機に瀕していると報告されています。

加えて、医師や看護師といった医療従事者の不足も深刻で、特に広大な農村地域においては、基本的なプライマリケアや専門的な医療サービスへのアクセスが困難な状況が続いています。

次に、教育システムについてです。歴史的に、アラバマ州の教育成果は全米レベルで見ると低い評価を受けることが多く、常に下位グループに位置づけられてきました。しかし、近年、特に初等教育の分野で注目すべき改善の兆しが見られます。

全国的な学力テストであるNAEP(国家の成績表)において、アラバマ州の小学4年生の成績は、読解力で全米34位、算数で32位まで順位を上げました。

これは、数年前(2019年)にはそれぞれ49位、52位という極めて低い順位だったことを考えると、目覚ましい進歩と言えます。この背景には、州が力を入れてきた早期識字教育の推進、失読症(ディスレクシア)の早期発見と支援体制の構築、質の高い識字指導法の導入、そして学習に困難を抱える生徒への的を絞った個別介入といった、一連の教育改革の成果があるとされています。

一方で、この初等教育での改善にもかかわらず、中学校レベルに目を向けると、生徒たちの読解力や数学の習熟度は依然として全国平均に遅れをとっており、小学校での成功を中学校以降の学力向上に繋げていくことが今後の大きな課題です。

また、州の学校への資金配分方式が時代遅れであり、生徒一人当たりの教育支出額で全米39位に留まっていることや、各学校が地域の特性や生徒個々のニーズに柔軟に対応するための裁量が限られていることも、教育システム全体のさらなる改善を妨げる要因として指摘されています。

州全体の健康問題として、肥満の蔓延も極めて深刻です。かつて(1970年代)はわずか5%だったとされる成人肥満率は、現在では35%を超え、州職員に限れば40%近くに達するという驚くべき状況です。この肥満の増加は、関連する生活習慣病の医療費を増大させ、州の財政を圧迫するとともに、労働人口全体の健康状態を悪化させ、経済の生産性にも悪影響を与えています。

また、経済活動の活力を示す指標である労働力参加率(16歳以上で働く意欲のある人の割合)も、アラバマ州は57.7%と全米で最も低いレベルにあり、全国平均を大きく下回っています。

これは、州内に根強く残る貧困の問題や、若者や求職者にとって魅力的なキャリアパス(職業選択や昇進の道筋)が限られていることなどが複合的に影響していると考えられます。

さらに、これまで述べてきた医療、教育、経済における様々な課題は、残念ながら州内のマイノリティコミュニティ(人種的・民族的少数派)に、より深刻な影響を及ぼす傾向があります。

質の高い医療や教育へのアクセス、そして安定した経済的機会における根強い格差が、貧困や社会的な不平等を世代間で再生産してしまうという悪循環を生み出している側面も否定できません。

ここまでアラバマ州が抱える課題を中心に述べてきましたが、改善に向けた努力も続けられています。教育分野では、前述の通り、特に初等教育における改革が目に見える成果を上げ始めています。

また、労働力開発の分野でも、州経済の将来を担う人材を育成するため、需要の高い医療分野や、高度な技術を要する職業(熟練技能職)などで活躍できる人材の育成プログラムなどが進められています。

しかしながら、アラバマ州が「暮らしにくい州」の上位に挙げられる背景には、医療へのアクセス、教育の質と公平性、深刻な肥満問題、低い労働力参加率といった、根深く構造的な問題が存在します。

これらの課題、特に医療へのアクセス改善(メディケイド拡大を含む議論の行方)、貧困の削減、そして全ての子供たちに公平な教育機会を提供するための資金配分改革といった根本的な問題に対処するには、今後も継続的な政策努力と社会全体の投資が不可欠です。

ネバダ州

かつて銀の採掘で栄えたことから「シルバーステート」として知られるネバダ州は、ラスベガスが象徴する世界的なエンターテイメント産業、広大な砂漠やタホ湖をはじめとする壮大な自然景観、そして所得税がないといった税制面のメリットで、国内外から多くの人々を引きつけています。

しかし、このダイナミックで魅力的な州での生活を具体的に考える際には、その華やかなイメージの裏にある、住民が日々直面しているいくつかの深刻な課題についても、目を向けることが極めて重要です。

まず、ネバダ州における最も差し迫った問題の一つが、深刻な住宅危機です。州は、家賃を支払うために収入の多く(35%以上)を費やさざるを得ない住民の割合が、全米で2番目に高いという厳しい状況下にあります。

家賃を支払う人々の半数以上が、この過重な住居費負担に苦しんでいます。持ち家を持つ人々にとっても状況は楽ではなく、住宅所有者の約4分の1が同様のコスト負担に直面しており、この指標では全米で5番目に負担が大きい州とされています。

この背景には、2018年以降の住宅コストの急激な高騰があります。主要な人口中心地であるクラーク郡(ラスベガス周辺)では平均家賃が55%、ワショー郡(リノ周辺)では46.5%も上昇しました。

この結果、多くの一般的な職業の平均年収では、基本的な1ベッドルームのアパートの家賃をまかなうことさえ困難な状況が生まれています。この価格高騰の根本原因は、深刻な住宅供給不足です。

ネバダ州の広大な土地の約85%が連邦政府の管理下にあり、これが住宅開発の大きな物理的制約となっています。加えて、地域の土地利用に関する規制(ゾーニング)や、住宅建設に必要な許認可手続きの遅れも、新規供給を滞らせる要因となっています。

さらに、建設業界における熟練労働者の不足も深刻で、建設労働者1,000人あたりの見習工の数は全米で下から2番目という少なさです。これにより住宅開発プロジェクトは遅延し、特に中間所得層の家族にとっては、手頃な価格の住宅を見つけることが極めて困難になっています。

次に、治安の問題です。ネバダ州は、残念ながら全米でも有数の犯罪率の高さに長年悩まされています。特に暴力犯罪は深刻化しており、2025年現在、前年と比較して57%も増加するという極めて憂慮すべき統計が報告されています。

州民の22%が過去に暴力犯罪の被害を経験したと回答しており、これは全国平均(14%)を大きく上回る数値です。財産犯罪(窃盗など)も増加傾向にあり、前年比で11%増加しました。

ネバダ州民が財産犯罪の被害に遭う可能性は、全米でニューメキシコ州に次いで2番目に高いとされています。特に、オンラインショッピングの普及に伴う玄関先からの荷物の盗難は後を絶たず、住民の42%が過去1年間に被害を経験したと報告しています。

このような状況を反映し、州内で「安全だと感じる」と回答した住民はわずか39%に過ぎず、これは全国平均(48%)を大きく下回っています。高い不安レベルにもかかわらず、自宅にセキュリティシステムや監視カメラを設置するなどの具体的な安全対策を講じている住民は32%に留まるというデータもあります。

教育に関しても、ネバダ州は多くの構造的な課題を抱えています。英語や数学の標準学力テストの成績、高校の卒業率、そして生徒一人当たりにかけられる教育予算など、多くの全国的な教育指標において、州は常に最下位グループに位置づけられてきました。

2025年には、州として記録的な額の教育投資を行ったにもかかわらず、生徒一人当たりの教育予算は、専門家が質の高い教育に必要と考えるレベルよりも依然として4,000ドル以上も低いままでした。

学力面での課題は深刻で、コミュニティカレッジ(地域の短期大学)に入学する高校卒業生の約70%が、大学レベルの授業についていくための英語や数学の基礎学力が不足しており、補習コースの受講を余儀なくされています。

近年の新型コロナウイルスのパンデミックによる学校教育の混乱は、これらの学力格差をさらに拡大させたと指摘されています。また、学校内でのいじめも無視できない問題で、高校生の約7人に1人がいじめの被害を報告しています。

さらに、マイノリティ(人種的・民族的少数派)の家庭は、学校から十分な支援や情報提供を受けられていないと感じるケースが多いという、教育における公平性の問題も根強く残っています。

経済面では、ネバダ州はラスベガスに代表される観光業とホスピタリティ産業に大きく依存しているという特徴があります。これらの産業は州経済の柱である一方で、景気の変動やパンデミックのような外部からの衝撃に対して非常に脆弱であるというリスクも内包しています。

また、これらの産業に従事する人々の賃金水準が比較的低いことも、前述した住宅コストの高騰と相まって、多くの住民の生活を経済的に圧迫する要因となっています。

最近では、労働市場の状況によっては、雇用主が人員削減に踏み切る動きもあり、特に観光業への依存度が高い南ネバダ地域では、失業率の上昇が経済的な困難をさらに深刻化させる懸念も指摘されています。

ここまでネバダ州が直面する深刻な課題を中心に述べてきましたが、州はこれらの問題に対して無策ではありません。住宅問題に対しては、土地利用規制の改革、建築許可手続きの迅速化、そして開発可能な連邦所有地の解放に向けた働きかけなど、供給を増やすための様々な取り組みが進められています。

教育分野でも、近年、教育への資金投入額は大幅に増加しており、長年の課題であった資金不足の解消や、教員の給与改善に向けた具体的な動きが見られます。

しかしながら、ネバダ州が一部で「最も住みにくい州」の一つとして評価される背景には、住宅の入手困難さ、極めて高い犯罪率、慢性的な教育システムの課題、そして景気変動に左右されやすい経済構造といった、根深く、解決が容易ではない問題が山積しています。

アーカンソー州

豊かな自然で知られることから「ナチュラルステート(The Natural State)」という愛称が示す通り、アーカンソー州はオザーク高原の息をのむような景色、豊かな森林、清らかな川や湖、そして世界的に有名なホットスプリングス国立公園など、壮大な自然環境に恵まれた州です。

また、全米平均と比較して生活費が低いことも、移住を考える上で大きな魅力となるかもしれません。しかし、この自然豊かな地での新しい生活を具体的に計画する際には、その魅力的な側面だけでなく、州が直面しているいくつかの深刻な生活基盤に関わる課題についても、目を向けておくことが不可欠です。

まず、州民の健康と医療アクセスに関する課題から見ていきましょう。アーカンソー州は、残念ながらいくつかの深刻な医療問題を抱えています。

特に口腔衛生の状況は憂慮すべきもので、2019年のデータでは、歯科保険に加入している成人の中でも、実際に歯科サービスを利用した人の割合はわずか30%と、全米でも最低レベルの利用率に留まっています。

この背景には、特に広大な農村部における歯科医の深刻な不足があります。州内の11の郡では人口1,000人あたりの歯科医が1人以下、さらに2つの郡には歯科医が全く存在しないという厳しい現実があります。

また、喫煙率の高さも依然として大きな問題で、成人の26.3%が紙巻たばこや電子たばこなどの製品を使用しており、これは全米でも高い水準です。喫煙は、州内で予防可能な死因の筆頭であり、心臓血管疾患や肺がんの高い罹患率の主因となっています。

さらに深刻なのが、妊産婦死亡率の高さです。アーカンソー州はこの指標において全米で最も高い州の一つであり、多くの妊婦が必要な妊婦検診を適切な時期に受けなかったり、あるいは全く受けなかったりするケースが後を絶ちません。

毎年約1万人の女性が妊娠初期まで検診を受けず、約1,000人に至っては陣痛が始まるまで一度も医師の診察を受けないという、母子の健康にとって極めて危険な状況が報告されています。

次に、治安の問題です。アーカンソー州の暴力犯罪発生率は人口10万人あたり620件と高く、これは全米平均を66%も上回る水準です。過去10年間で暴力犯罪は34%増加し、特に悪質な暴行(加重暴行)は51%、殺人は76%も増加するなど、治安の悪化傾向が顕著に見られます。

強盗や窃盗といった財産犯罪も州全体で蔓延しており、計算上、ほぼ7分ごとに何らかの事件が発生していることになります。さらに特筆すべきは、アーカンソー州の収監率の異常な高さです。人口10万人あたり912人が収監されており、これは世界中のどの民主主義国家よりも高い数値です。

この事実は、州の刑事司法システムが抱える根深い構造的な問題、そして刑務所の深刻な過剰収容状態を反映していると考えられ、社会全体で取り組むべき大きな課題となっています。

経済面においては、アーカンソー州の魅力の一つとして、生活費の安さが挙げられます。州全体の生活費は全国平均よりも約8%低く、特に住宅費は平均を23%も下回っています。

これは、日々の家計にとって大きな助けとなる可能性があります。しかし、このメリットは、州内に根強く残る貧困と限られた経済的機会によって、残念ながらその価値が薄れてしまう側面があります。

州民のおよそ12.8%が貧困線以下で生活しており、この割合は特に農村部でさらに高くなる傾向があります。州の最低賃金は時給11ドルですが、これは大人2人の家族が貧困ラインをわずかに上回る程度の水準であり、特に保育費用などが必要となる子育て世帯にとっては、十分な生活費を確保するには厳しいのが現実です。

州全体としては、製造業や医療分野などで経済的な成長も見られるものの、多くの地域、とりわけ農村部においては、多様でより高い賃金を得られるような雇用機会が依然として不足しています。このため、物価が安いにもかかわらず、多くの住民が経済的な安定を得られずに苦しんでいるという状況が生まれています。

教育システムに関しても、アーカンソー州は課題を抱えています。歴史的に、州は学校への資金不足や生徒の学力成果の低迷に悩まされており、教育関連の全国ランキングでは常に下位に位置づけられてきました。

近年、初期の読み書き能力を向上させるプログラムなどで一定の進歩は見られるものの、全体的な学力水準は依然として全国平均を下回っており、全ての子供たちに質の高い教育を提供するための継続的な努力が必要です。

結論として、アーカンソー州が「住みにくい州」の上位にランクされる背景には、深刻な医療アクセス問題(特に口腔衛生、妊産婦ケア)、高い犯罪率と異常な収監率、生活費の安さにもかかわらず蔓延する貧困と限られた雇用機会、そして依然として課題の多い教育システムといった、複合的で根深い要因が存在します。

北西アーカンソー地域のように、近年目覚ましい経済成長を遂げ、生活の質が高いとされるエリアも存在しますが、州全体としては、医療、安全、経済的安定といった基本的な生活の質に関わる広範な課題が、その豊かな自然という大きな魅力を損なっていると言わざるを得ません。

オクラホマ州

開拓時代の土地獲得競争で、他の人より『早く(sooner)』行動した人々(スーナー)にちなんで、「スーナーステート(Sooner State)」の愛称で知られるオクラホマ州は、アメリカ西部の開拓史におけるドラマチックな歴史、州内に色濃く残る多様なネイティブアメリカンの文化、広大な平原から丘陵地帯まで広がる変化に富んだ自然、そして比較的低い生活費など、多くのユニークな魅力を持つ州です。

しかし、この個性豊かな州での新しい生活を具体的に考える際には、その魅力的な側面だけでなく、州が直面しているいくつかの重要な生活基盤に関わる課題についても、深く理解しておくことが不可欠です。

まず、州民の健康と医療へのアクセスに関する課題から見ていきましょう。オクラホマ州の広範な地域、とりわけ農村部では、医師や看護師といった医療従事者が深刻に不足しており、「医療従事者不足地域(HPSA)」に指定されています。

データによれば、都市部と比較して、非都市圏におけるプライマリケア医の数は人口比で約半分に過ぎず、医療資源の地域間格差は歴然としています。

この状況は、地方における医療アクセスの困難さを深刻化させており、2005年以降、州内では9つの地方病院が閉鎖に追い込まれました。現在運営されている病院の中でも、ほぼ半数が経営難などから閉鎖の危機に瀕していると報告されています。

このため、地方に住む人々は、基本的な病院での診療や入院サービスを受けるために、車で30分以上という長い時間をかけて移動しなければならないケースも少なくありません。

医療保険に関しても、将来的な懸念が存在します。現在、連邦政府の補助金によって、医療保険制度改革法(ACA)に基づく保険市場(マーケットプレイス)で購入する保険の保険料は比較的抑えられていますが、もしこの補助金が将来的に打ち切られた場合、オクラホマ州の約30万人の加入者は、保険料が最大で65%も急騰する可能性に直面します。

試算では、標準的なプラン(シルバープラン)の月額保険料が、現在の平均58ドルから153ドルへと、約2.6倍に跳ね上がる可能性も指摘されています。

こうした医療へのアクセスの困難さや保険制度の不安定さは、州民の健康状態にも影を落としており、オクラホマ州は健康に関する様々な指標を総合した「医療成果」ランキングで全米49位と、極めて低い評価を受けています。特に心臓病、癌、脳卒中、呼吸器系の疾患による死亡率が高いことが、長年の課題となっています。

次に、治安の問題です。オクラホマ州は、残念ながら犯罪率が高い州の一つとして知られています。暴力犯罪の発生率は全米で10番目に高く、住民の17%が過去に何らかの暴力事件に遭遇したと報告しており、これは全国平均(14%)を上回る数字です。

特に銃が関わる暴力は深刻で、住民の16%が過去1年間に銃による暴力を経験したと報告しており、この割合は全米で5番目に高い水準です。強盗や窃盗などの財産犯罪の発生率も全米で最も高いレベルにあり、州全体では全米で3番目に高い発生率となっています。

また、オンラインショッピングの普及に伴う玄関先からの荷物の盗難被害も多く、その発生率は全米で12番目です。州内の主要都市であるタルサやオクラホマシティでは、近年、殺人事件の発生件数が増加傾向にあり、治安への懸念が高まっています。

2024年には、タルサでは9月中旬までに発生した殺人件数が前年の年間合計を上回り、オクラホマシティでも、警察による検挙率の改善努力や地域社会による暴力削減への取り組みが進められているにもかかわらず、前年を上回る殺人事件が発生しました。

犯罪率の高さと密接に関連して、オクラホマ州は収監率(人口あたりの収監者数)が異常に高いことでも知られています。州内では人口10万人あたり550人が刑務所や拘置所に収監されており、これは全国平均(10万人あたり355人)を58.6%も上回る、全米で4番目に高い数値です。

過去10年間で、刑事司法改革の取り組みにより収監率は20%減少しましたが、依然として極めて高い水準にあり、近年はその減少ペースも鈍化しています。

この高い収監率は、単に犯罪が多いというだけでなく、州の刑事司法制度全体が抱える、より広範な構造的問題、例えば量刑の厳しさや仮釈放制度の運用などを反映していると考えられます。

刑務所の過密状態や、受刑者の社会復帰を支援する更生プログラムの不足が、再犯率の高さに繋がり、結果として公共の安全や州の財政に継続的な負担をかけているという悪循環も指摘されています。

経済面では、オクラホマ州の経済は伝統的に石油および天然ガスといった資源産業に大きく依存しています。これは州に富をもたらす重要な基幹産業である一方で、エネルギー市場の価格変動によって州経済全体が大きく左右されるという脆弱性も抱えています。

特に農村部においては、これらの資源産業以外での多様な雇用機会が限られているのが現状です。州全体の生活費は比較的安価であるものの、多くの職種における賃金水準が低いことが、住民の経済的な安定や向上を妨げる一因となっています。

ここまでオクラホマ州が抱える課題を中心に述べてきましたが、改善に向けた努力も続けられています。医療分野では、連邦政府からの資金が地方病院の経営支援や医療アクセスの改善に充てられています。

犯罪対策としては、都市部において地域社会が主体となった暴力防止プログラムが実施され、犯罪率の低下を目指す動きがあります。また、刑事司法改革によって、過去には収監率を大幅に削減した実績もあります。

サウスカロライナ州

州の木であるパルメット(ヤシ科の植物)にちなんで、「パルメットステート(The Palmetto State)」の愛称で親しまれるサウスカロライナ州は、温暖な気候に恵まれ、マートルビーチやヒルトンヘッドアイランドに代表される美しい海岸線、チャールストンのような歴史的な魅力あふれる街並み、そして独自の豊かな文化で知られています。

ゴルフの名所としても名高く、近年は一部地域で経済的な成長も見られます。しかし、この魅力的な州での新しい生活を具体的に考える際には、その輝かしい側面だけでなく、州が直面しているいくつかの重要な生活基盤に関わる課題についても、深く理解しておくことが不可欠です。

まず、治安の問題から見ていきましょう。残念ながら、サウスカロライナ州は高い犯罪率に長年悩まされており、これは移住を検討する上で重要な考慮事項となります。

州は全米で9番目に高い暴力犯罪率を記録しており、2023年には人口10万人あたり471件の事件が発生しました。これは全国平均(374件)を26%も上回る数値です。特に悪質な暴行(加重暴行)が暴力犯罪の大半(79%)を占めており、この割合も全国平均を大きく上回っています。

さらに憂慮すべきは殺人事件の増加傾向で、過去10年間で40%も増加し、近年では過去最高の発生件数を記録しました。暴力犯罪だけでなく、財産犯罪(窃盗、自動車盗難など)の発生率も全米で最も高い州の一つで、人口10万人あたり2,193件発生しています。

これは全米平均を14%上回る水準です。過去10年間で強盗事件は大幅に減少しましたが、日常的な窃盗や自動車の盗難は依然として住民の安全を脅かす大きな懸念事項です。

こうした状況を反映し、州民の中で自分の住む地域社会で「安全だと感じる」と答えたのは44%に留まり、これは全国平均(48%)を下回っています。特に州都コロンビアや歴史都市チャールストンなどの都市部では、犯罪率が高い傾向が見られます。

次に、教育システムの課題についてです。サウスカロライナ州の公教育は、残念ながら多くの指標で全米平均を下回る評価を受けています。学力面では、数学において学年相応のレベルに達している生徒はわずか41%に過ぎません。

大学進学適性テストであるSATの平均点は1030点で全米平均(1050点)に届かず、もう一つの主要なテストであるACTの平均点も18.9と、全国平均(19.8)より低い結果となっています。高校の卒業率も84%と、全国平均(87%)を下回っています。

これらの課題は、特に貧困率が高い農村地域でより深刻化する傾向があります。例えば、ディロン郡のような地域では、生徒の93%が貧困家庭に属するという極めて厳しい状況があり、これが学業成績に直接的な影響を与えていると考えられています。

州全体として、学校への資金配分の公平性や、有資格教員の確保・維持といった構造的な問題も、教育水準の向上を妨げる要因となっています。

教育の課題とも密接に関連するのが、州内に根強く残る貧困の問題と、それに伴う医療アクセスにおける格差です。州民の約16%が貧困線以下の生活を送っており、これは全国平均(14%)を上回る数値です。

この貧困は、特定の人種・民族グループに偏って影響を及ぼす傾向があり、特にアフリカ系アメリカ人は、州人口の約27%であるにもかかわらず、貧困層の43%を占めるという不均衡な状況があります。

多くの研究が示すように、家庭の貧困レベルと子供の学業成績の間には強い負の相関関係があり、貧困地域の学校では質の高い教員を確保することが困難になるという悪循環も存在します。さらに、医療へのアクセスも大きな課題です。

高額な保険料や、雇用主が提供する医療保険の適用範囲が限定的であることなどから、50万人以上の州民が必要な健康保険に加入できていません。

その結果、サウスカロライナ州は医療費の未払い(医療負債)を抱える住民の割合が全米で2番目に高く、住民の約3分の1が何らかの医療費未払いの問題を抱えているとされています。

特に農村部においては、医師や看護師などの医療従事者が深刻に不足しており、都市部との間で、受けられる医療の質や健康状態に大きな格差が生じています。

ここまでサウスカロライナ州が抱える課題を中心に述べてきましたが、改善に向けた努力も続けられています。

教育分野では、数学と英語の学習基準が最近更新され、実社会で役立つスキルの習得や、LETRSプログラムのような科学的根拠に基づいた読み書き能力向上策を通じて、生徒の学力向上を目指す取り組みが進められています。

犯罪対策としては、地域社会が主体となった暴力防止プログラムなどが実施され、安全なコミュニティづくりに向けた努力が行われています。

また、医療分野では、連邦政府による医療費補助の拡大などが実現すれば、長期的には保険未加入者の問題を緩和し、医療アクセスの格差縮小に繋がる可能性も期待されています。

ケンタッキー州

青々とした牧草(ブルーグラス)が広がる美しい風景から、「ブルーグラス・ステート(The Bluegrass State)」として世界に知られるケンタッキー州は、なだらかな丘陵地帯に広がる美しい牧草地の風景、世界的に有名なバーボンウィスキーの蒸留所、スリルあふれるケンタッキーダービーに代表される競馬文化、そしてブルーグラス音楽をはじめとする豊かな音楽の伝統など、多くのユニークな魅力を持つ州です。

しかし、この個性あふれる州での新しい生活を具体的に考える際には、その魅力的な側面だけでなく、州が直面しているいくつかの重要な生活基盤に関わる課題についても、深く理解しておくことが不可欠です。

まず、経済状況について見ていきましょう。ケンタッキー州は、残念ながら経済的に多くの課題を抱えています。州の貧困率は全米で6番目に高く、2023年の時点で住民の16.4%が貧困線以下の生活を送っています。

特に子供たちの貧困は深刻で、州内の子供の21%が貧困状態にあり、これは全米で5番目に高い割合です。収入面でも厳しい状況が続いており、2023年の世帯収入の中央値は61,118ドルと、全国平均(80,610ドル)を大幅に下回っています。

さらに、人種間の経済格差も顕著で、特に黒人世帯の収入は2023年に10%近く減少し、平均で41,439ドルまで落ち込みました。失業率も懸念材料であり、2025年初頭の時点で5.3%と、全国平均(4.1%)を上回っています。

特にアパラチア山脈地域などの農村部では、伝統的な産業である農業や石炭採掘以外の安定した、多様な雇用機会が限られており、都市部よりもさらに高い失業率に直面しています。

次に、医療へのアクセスに関する課題です。ケンタッキー州では、日常的な健康管理の基本となるプライマリケア(かかりつけ医など)を提供する医師の数が、人口比で見ると全国で40位と低い水準にあります。

州全体で診療を行っているプライマリケア医は約2,700人ですが、その分布には大きな地域差が存在します。州民の約40%が農村部に居住しているにもかかわらず、これらの地域で活動しているプライマリケア医は全体のわずか17%に過ぎません。

これは、地方における医療アクセスの困難さを如実に示しています。また、州全体として糖尿病や心臓病といった慢性疾患の有病率が高いことも長年の課題です。

さらに、州東部のアパラチア地域においては、石炭採掘の歴史が地域住民の健康に特有のリスクをもたらしています。鉱山労働者は、粉じんへの長期間の曝露により、進行性の肺疾患である塵肺(じんぱい)や珪肺(けいはい)、その他の深刻な呼吸器疾患を発症するリスクが非常に高くなっています。

近年、州はメディケイド(低所得者向け公的医療保険)の適用範囲を拡大し、ケンタッキー州子ども健康保険プログラム(KCHIP)と共に、多くの住民の医療保険カバレッジは改善されました。しかし、これらの公的プログラムの対象とならない人々や、手頃な民間保険に加入できない人々にとっては、依然として必要な医療へのアクセスに格差が残っています。

教育システムに関しても、ケンタッキー州は長年にわたり構造的な課題を抱えています。州の公立学校システムは、SEEK(Support Education Excellence in Kentucky)と呼ばれる資金配分プログラムによる改善努力にもかかわらず、依然として十分な資金が行き渡っていない状況が続いています。

2024-2025年度の予算においても1200万ドルの資金不足が見込まれており、これは財政的な課題が継続していることを示しています。その結果、標準化された学力テストのスコアや高校卒業率など、多くの全国的な教育指標において、州は低い順位に甘んじています。

近年、障害を持つ生徒や英語を母語としない生徒など、特別な支援を必要とする生徒が増加しており、限られた教育リソースはさらに逼迫する傾向にあります。

歴史的には、1989年に州最高裁判所が、当時の公立教育システムを学区間の著しい不平等と資金不足を理由に違憲であると判断するという画期的な出来事がありました。

それ以降、様々な教育改革が実施されてきましたが、その成果や進捗状況は学区によってばらつきがあり、全ての子供たちに公平で質の高い教育を提供するという目標達成には、まだ課題が残されています。

ケンタッキー州、特に東部の山間部においては、石炭採掘産業が残した負の遺産とも言える環境問題が深刻です。長年にわたる採掘活動は、地域の河川や地下水を汚染し、多くの農村地域で安全な飲料水の確保を脅かしています。

鉱山から排出される汚染された水の問題や、採掘跡地の不適切な管理が、洪水のリスクを高めたり、水路の長期的な汚染を引き起こしたりしています。

特に「山頂除去採掘」と呼ばれる大規模な採掘が行われた地域の周辺住民の間では、他のアパラチア地域と比較して、がんや先天性異常の発生率が高いという研究結果も報告されており、公衆衛生への深刻な影響が懸念されています。

さらに、近年の法改正により、水質汚染に対する州の監視体制が弱められ、環境保護よりも産業活動の利益が優先される傾向があるとの批判も出ています。

これは、特に井戸水に頼って生活している多くの住民にとって、飲料水の安全性をさらに危険にさらす可能性があります。こうした水質汚染の問題は、老朽化した水道インフラの問題と相まって、多くの地域で清潔な飲料水への安定したアクセスを困難にしています。

ここまでケンタッキー州が抱える課題を中心に述べてきましたが、州政府はこれらの問題に対処するための取り組みを進めています。現職のアンディ・ベシア州知事が推進する「ベター・ケンタッキー・プラン」では、水および廃水処理プロジェクトに5億ドルを投じ、連邦政府からのインフラ投資資金も活用して、老朽化した道路や橋の改修を行うなど、インフラの抜本的な改善を目指しています。

また、経済開発や、前述の医療・教育分野での改革努力も継続されています。

まとめ

本記事では、ルイジアナ州からケンタッキー州に至る、現在アメリカで「最も住みにくい」とされる10の州について、その背景にある深刻な課題を詳しく見てきました。

経済的な苦境と根深い貧困、医療へのアクセスの困難さ、高い犯罪率、教育システムの構造的な問題、そして老朽化したインフラ――これらの要因が複合的に絡み合い、住民の生活の質に大きな影響を与えている現実がお分かりいただけたかと思います。これらの州の多くに共通して見られるのは、世代を超えて続く構造的な格差であり、改善には長期的な取り組みが必要とされています。

もちろん、留意すべきは、これらのランキングやデータは、特定の客観的な指標に基づいて算出されたものであり、その州の全てを表すものではないということです。

統計データだけでは測れない、それぞれの州が持つ独自の文化的な豊かさ、地域コミュニティの温かさ、特定の産業におけるビジネスチャンス、あるいは息をのむような美しい自然など、個人の価値観やライフスタイルによっては、これらの州にもかけがえのない魅力や可能性があることも事実です。

最終的にどの州があなたにとって「住みやすい」場所となるかは、ご自身の優先順位、移住の目的、そしてライフステージによって大きく異なります。「生活費の安さ」を最優先するのか、「子供の教育環境」なのか、「キャリアアップの機会」なのか、それとも「治安の良さ」や「自然との近さ」なのか。

この記事で得た情報は、あくまで判断材料の一つとして活用し、鵜呑みにすることなく、さらに多角的な情報収集を心がけてください。可能であれば、実際に候補地を訪れ、現地の雰囲気をご自身の肌で感じ、地域の人々と話してみることも、非常に有益な経験となるでしょう。

アメリカ移住という大きな一歩を踏み出すためには、時に厳しい現実にも目を向け、集めた情報を精査し、慎重に計画を進める必要があります。ご自身が何を最も重視するのかを明確にし、メリットとデメリットを冷静に比較検討することこそが、後悔しない選択への最も確かな道筋です。この記事が、皆様の夢の実現に向けた賢明な判断の一助となり、より良い未来への扉を開くきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。

リサーチャー at 

リサーチャーのサトルです。好きな言葉は「真実は一つ、解釈は無限」



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