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目次
- 1 歴史に残るオークション:最も高額で落札されたアイテムたち
- 2 レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「サルバトール・ムンディ」
- 3 ウィレム・デ・クーニングの「インターチェンジ」
- 4 ポール・セザンヌの「カード遊び」
- 5 レンブラント・ファン・レインの「旗手」
- 6 アンディ・ウォーホルの「Shot Sage Blue Marilyn」
- 7 パブロ・ピカソの「アルジェの女たち(バージョンO)」
- 8 アメデオ・モディリアーニの「横たわる裸婦」
- 9 フランシス・ベーコンの「ルシアン・フロイドの肖像習作3点」
- 10 1955年式メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウト・クーペ
- 11 アルベルト・ジャコメッティの「指をさす男」
- 12 まとめ
歴史に残るオークション:最も高額で落札されたアイテムたち
世界には、想像を絶するほどの高値で取引される品々が存在します。希少な美術品、歴史的な遺物、コレクター垂涎のアイテム…。
その取引の舞台となるのがオークションです。熱気に包まれた会場で、世界中の富豪やコレクターたちが激しい入札合戦を繰り広げ、時には予想をはるかに超える価格で落札されることも。
近年、アート市場は活況を呈しており、オークションで記録的な高値が次々と更新されています。レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」が4億5030万ドルで落札されたニュースは、世界に衝撃を与えました。
しかし、高額で落札されるのは絵画だけではありません。ウィレム・デ・クーニングの「インターチェンジ」、ポール・セザンヌの「カード遊び」といった巨匠たちの作品はもちろんのこと、1955年式メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウト・クーペのような希少なヴィンテージカー、アルベルト・ジャコメッティの「指をさす男」のような彫刻作品も、オークションで驚くべき価格を記録しています。
一体なぜ、これらの品々はこれほどの高値で取引されるのでしょうか?
そこには、希少性、歴史的価値、芸術的価値、そしてコレクターたちの所有欲など、様々な要因が絡み合っています。
この記事では、オークション史上最高額で落札された驚愕の品々を、その背景にあるストーリーと共にご紹介します。
巨匠たちの傑作から、歴史を彩った貴重な品々まで、オークションの世界を覗いてみましょう。
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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「サルバトール・ムンディ」
レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」は、2017年にクリスティーズで4億5,030万ドルという驚異的な価格で落札され、オークション史上にその名を刻みました。
この作品は、ルネサンス様式の服装をまとったキリストが、左手に水晶玉を持ち、右手で祝福を与える姿を描いたものです。1500年頃に制作されたとされ、かつてはイングランド王チャールズ1世も所有していました。
しかし、1763年から1900年にかけて行方不明となり、2005年にニューオーリンズのオークションで再発見された時は、わずか1万ドルで取引されました。
その後、大規模な修復と調査を経て、レオナルドの真筆と認められ、ロンドンのナショナル・ギャラリーで展示されました。そして、2017年のクリスティーズのオークションでは、わずか20分足らずで落札され、最終的な価格は3億7000万ドルから4億ドルへと跳ね上がりました。この落札額は、それまでのオークション記録を大きく塗り替えるものでした。
しかし、この記録的な落札にもかかわらず、絵画の状態や修復の extent を理由に、真筆であることへの疑問の声も上がっています。また、落札者は当初匿名でしたが、後にサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子であることが明らかになりました。
ところが、売却後、この絵画は公の場に姿を現しておらず、その所在は謎に包まれています。このセンセーショナルな出来事は、美術品市場に新たな基準を打ち立てただけでなく、真贋鑑定や評価、そしてオークションが美術界に果たす役割について、多くの議論を巻き起こしました。
ウィレム・デ・クーニングの「インターチェンジ」
ウィレム・デ・クーニングの「インターチェンジ」は、1955年に制作された油彩画で、縦200.7cm×横175.3cmのキャンバスに描かれています。この作品は、デ・クーニングがそれまでの「ウーマン」シリーズから、より抽象的な都市風景へと移行する時期に描かれたもので、中央に描かれたピンク色の塊は、座っている女性を表していると考えられています。
そして、「インターチェンジ」は、同時代の芸術家フランツ・クラインの影響を受け、よりジェスチュアルな筆致を取り入れたデ・クーニングの作風を反映しており、具象と抽象の要素を融合させた、抽象表現主義における彼の独自のアプローチを示す重要な作品となっています。
さらに、この絵画は、1955年にデ・クーニング自身によってわずか4,000ドルで売却されましたが、その価値は時を経て急騰し、2015年9月には、デビッド・ゲフィン財団がヘッジファンドマネージャーのケネス・C・グリフィンに3億ドルで売却しました。これは、当時、絵画取引としては史上最高額の1つでした。
その後、この絵画はシカゴ美術館に貸し出され、一般公開されていましたが、2024年現在、その所在は不明となっています。
なお、「インターチェンジ」とジャクソン・ポロックの「ナンバー17A」が合わせて5億ドルで取引されたことは、アート市場における歴史的な出来事であり、主要な抽象表現主義の作品に非常に高い価値が置かれていることを示しました。
このように、わずか4,000ドルで売買されていた絵画が、3億ドルの傑作へと変貌を遂げたことは、デ・クーニングの作品に対する評価の劇的な変化と、抽象表現主義芸術に対する世界的な評価の高まりを象徴しています。
ポール・セザンヌの「カード遊び」
ポール・セザンヌの「カード遊び」は、1890年から1895年にかけて制作された5点の絵画シリーズの1つで、トランプに興じる農民たちの姿を捉えています。中でも、2011年に2億5000万ドルで落札されたバージョンは、1895年頃に完成した5作品の中で唯一美術館に所蔵されていない貴重な作品です。
この絵画では、質素な田舎の室内で、テーブルを挟んで2人のカードプレーヤーがゲームに没頭する様子が描かれています。セザンヌは、具象と抽象の要素を巧みに組み合わせ、より抽象的なスタイルへと移行していく過程を示しており、彼の芸術的進化を理解する上で重要な作品と言えるでしょう。
そして、2011年4月、ギリシャの海運王ジョージ・エンビリコスの遺産管理者が、この絵画をカタール国に2億5000万ドルで売却しました。この取引は当時、単一作品としては史上最高額であり、美術品市場に大きな衝撃を与えました。
また、従来のトランプをする人々を描いた作品とは異なり、「カード遊び」は騒々しい居酒屋ではなく、静かな室内に焦点を当て、思索的な雰囲気を醸し出しています。セザンヌは、人物や室内の要素を描く際に、独特の構築的な筆致を用いることで、堅固さと永続性を感じさせる効果を生み出しています。
さらに、茶色、黄土色、青を基調とした落ち着いた色使いは、田園風景と静かに集中する人物たちの様子を反映しており、セザンヌの色彩感覚の豊かさを示しています。
この絵画の落札は、カタールが国際的なアート市場における主要なプレイヤーとして台頭してきたこと、そしてポスト印象派の傑作に対する世界的な評価の高まりを象徴する出来事となりました。
レンブラント・ファン・レインの「旗手」
レンブラント・ファン・レインの「旗手」は、彼が30歳の時に描いた1636年の作品で、画家としてのキャリアにおける重要な転換期を象徴する傑作です。この作品は、80年戦争中の兵士の姿を捉えたものであり、旗手として戦場に立つレンブラント自身の自画像でもあります。
この絵画は、レンブラントの野心的な試みを示しており、後の代表作「夜警」へと繋がる彼のキャリアにおける重要なマイルストーンとなりました。また、「旗手」は、イギリスのジョージ4世やロスチャイルド家など、1844年以降、数々の著名なコレクターに所有されてきたという豊かな歴史を持っています。
そして2022年、オランダ政府は、ライクスミュージアム基金とレンブラント協会からの寄付金を得て、この絵画を買い取りました。これにより、「旗手」はオランダ国内に恒久的に保管されることとなり、国民の共有財産となりました。
その後、この絵画はオランダの全州を巡回し、多くの人々に鑑賞されました。そして現在は、ライクスミュージアムの「名誉のギャラリー」に恒久的に展示されています。
ところで、旗手はオランダ独立戦争において重要な役割を担った人物であり、この絵画はオランダ国民にとって特別な文化的意義を持っています。レンブラントは、光と影の巧みな表現や複雑な細部の描写を通して、旗手の力強い存在感を描き出しており、彼の卓越した技術と進化するスタイルを垣間見ることができます。
しかしながら、この絵画の購入は、国家遺産と芸術作品購入のための公的資金の使用について、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックという状況下において、議論を呼ぶこととなりました。
とはいえ、「旗手」は、レンブラントの芸術的才能とオランダの歴史が融合した、まさに国民的宝と言えるでしょう。
アンディ・ウォーホルの「Shot Sage Blue Marilyn」
アンディ・ウォーホルの「Shot Sage Blue Marilyn」は、1964年に制作された40インチ四方のシルクスクリーン作品で、マリリン・モンローをモチーフにした5枚の絵画シリーズの1つです。この作品は、1953年の映画『ナイアガラ』の宣伝用写真をもとに制作され、背景には鮮やかなセージブルーが使われています。
そして、タイトルの「ショット」は、パフォーマンス・アーティストのドロシー・ポドバーがウォーホルのスタジオでマリリンの絵画に銃弾を撃ち込んだ事件に由来しています。ただし、この作品は被害を免れた貴重な1枚です。
2022年5月9日、クリスティーズ・ニューヨークのオークションにかけられた「Shot Sage Blue Marilyn」は、1億ドルからスタートし、激しい入札合戦の末、著名なアメリカ人美術商ラリー・ガゴシアン氏によって落札されました。最終的な落札価格は、手数料を含めて1億9500万ドルに達し、オークションで落札された20世紀の美術品としては史上最高額を記録しました。
この記録は、それまで最高額だったパブロ・ピカソの「アルジェの女たち(バージョン「O」)」の1億7940万ドルを上回るものでした。
さらに、この絵画は、トーマス・アンマンとドリス・アンマンのコレクションの一部であり、売却による収益はすべて慈善団体に寄付されることになっています。
過去には、広告エグゼクティブのレオン・クラウシャーやコンデナスト帝国のS.I.ニューハウスなど、著名なコレクターたちがこの作品を所有していました。
「Shot Sage Blue Marilyn」の売却は、記録的な落札価格だけでなく、現代美術市場とポップアートにおけるウォーホルの不朽の遺産への影響という点でも大きな注目を集めました。
この出来事は、ウォーホルの作品の象徴的な地位と、マリリン・モンローが今もなお文化的象徴として人々を魅了していることを改めて示すとともに、高級美術市場の活況を象徴するものとなりました。
パブロ・ピカソの「アルジェの女たち(バージョンO)」
パブロ・ピカソの「アルジェの女たち(バージョンO)」は、1955年に制作された油彩画で、縦114cm、横146.4cmのキャンバスに描かれています。この作品は、ウジェーヌ・ドラクロワの同名の絵画にインスピレーションを得て描かれた15点の連作の最終作であり、ピカソのキュビズム様式が遺憾なく発揮された傑作として知られています。
鮮やかな色彩と断片的な形態で表現された娼婦たちの姿は、見る者に強烈な印象を与えます。
そして、2015年5月11日、クリスティーズ・ニューヨークのオークションにおいて、「アルジェの女たち(バージョンO)」は、1億7940万ドルという驚異的な価格で落札されました。
この落札額は、それまでの美術品オークションの最高額を塗り替えるものであり、世界中に衝撃を与えました。
ちなみに、この絵画は、1956年にビクター・ガンツとサリー・ガンツ夫妻が21万2500ドルで購入し、長年彼らのコレクションの一部として大切に保管されていました。
オークションでは、入札開始価格の1億ドルからすぐに価格が跳ね上がり、最終的には購入者のプレミアムを含めて1億7940万ドルで落札されました。
後に、落札者はカタールの前首相ハマド・ビン・ジャシム・ビン・ジャベル・アール・サーニー氏であることが明らかになりました。
なお、「アルジェの女たち(バージョンO)」は、ニューヨーク近代美術館、ロンドンのテート・ギャラリー、シカゴ美術館など、世界中の著名な美術館で展示されてきた歴史を持ちます。
この絵画は、記録的な落札価格だけでなく、その芸術的価値、文化的参照、そしてピカソの作品全体における位置づけからも、非常に重要な作品とされています。
この記録破りの売却は、ピカソの芸術が時代を超えて高く評価されていること、そして世界中のコレクターにとって彼の作品が依然として魅力的であることを証明しました。
まさに、「アルジェの女たち(バージョンO)」は、美術史と美術市場の両方において、その名を永遠に刻むことになったのです。
アメデオ・モディリアーニの「横たわる裸婦」
アメデオ・モディリアーニの「横たわる裸婦」は、1917年から1918年にかけて制作された60cm×92cmの油彩画です。この作品は、モディリアーニがポーランド人ディーラー、レオポルド・ゾブロフスキーの支援を受けて描いた一連の裸婦画の一つであり、モディリアーニ初の、そして唯一の美術展に出品された可能性があります。しかし、その展覧会は裸婦画の不道徳性を理由に警察によって閉鎖されました。
ところが、「横たわる裸婦」は、モディリアーニの作品の中でも最も広く複製され、展示された作品の一つとして知られています。また、レオポルド・ゾボロフスキー、ジョナス・ネッター、ジャンニ・マッティオリなど、著名なコレクターのコレクションを渡り歩いた由緒ある作品でもあります。
そして、2015年11月、クリスティーズ・ニューヨークで競売にかけられたこの絵画は、1億7040万ドルという驚異的な価格で落札されました。これは、当時モディリアーニの絵画としては最高額であり、史上でも最も高額で落札された絵画の一つとなりました。落札者は中国の億万長者、劉益乾氏で、アメリカン・エキスプレスのカードで支払ったと伝えられています。
さらに、この絵画が競売にかけられるまで、ここ数年モディリアーニの裸婦画が競売にかけられることはほとんどなかったため、コレクターにとっては貴重な機会となりました。この作品は、ポスト・キュビズム、ブランクーシ、アフリカの彫刻など、さまざまな芸術的影響が融合されていることでも知られています。
加えて、モディリアーニの横たわる裸婦の絵画の中で最高傑作であると一部の専門家が評価しており、その価値を高めています。
今回の売却は、モディリアーニの裸婦画が美術市場においていかに希少価値が高く、人気があるかを裏付けるものであり、また、同氏が20世紀の芸術に遺した不朽の功績を証明するものでもあります。
フランシス・ベーコンの「ルシアン・フロイドの肖像習作3点」
フランシス・ベーコンの「ルシアン・フロイドの肖像習作3点」は、1969年に制作された3枚続きの絵画で、各パネルは198 x 147.5 cmの大きさです。
この作品は、ベーコンの友人であり、画家仲間でもあったルシアン・フロイドが、同じ椅子に3つの異なる姿勢で座っている様子を描いています。鮮やかなオレンジ色とベージュ色を基調とし、フロイトの姿が幾何学的な構造の中に浮かび上がるように描かれているのが特徴です。
しかし、この作品は1990年代後半に再び揃うまで、約15年間分割されていました。そして2013年11月12日、クリスティーズ・ニューヨークで競売にかけられ、当時の美術品オークション最高額となる1億4,240万ドルで落札されました。
これは、2012年に1億1990万ドルで落札されたエドヴァルド・ムンクの「叫び」が保持していた記録を更新するものでした。
さらに、このオークションは、7人のコレクターによる激しい入札合戦が繰り広げられ、最終価格は8500万ドルという事前予想をはるかに上回る結果となりました。ニューヨークのディーラー、ウィリアム・アクアヴェラが、身元不明の顧客の代理としてこの絵画を購入したと見られています。
ところで、ベーコンの作品では、3枚続きのパネル形式が重要です。各パネルは統一された物語としてではなく、個別に鑑賞されることを意図しています。この絵画は、フロイトとの芸術的な関係の集大成であり、彼らの複雑な友情とライバル関係を示しています。
加えて、このオークションは、高級美術品市場の強さと、世界中のコレクターにとってのベーコン作品の永続的な魅力を浮き彫りにしました。
「ルシアン・フロイドの肖像習作3点」の記録破りの落札価格は、美術史と美術市場の両方におけるその重要性を強調し、ベーコンのキャリアとルシアン・フロイドとの関係における重要な瞬間を象徴しています。
1955年式メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウト・クーペ
1955年式メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウトクーペは、1955年にわずか2台のみ製造されたプロトタイプの1台であり、自動車史上、非常に希少で価値の高い車です。この車の設計者であり主任エンジニアであったルドルフ・ウーレンハウトの名が付けられたこの車は、自動車工学とデザインの最高傑作の1台とされています。
そして、時速180マイル以上の速度を出すことができ、当時としては公道走行可能な車の中で最速の部類に入りました。3.0リッターの直列8気筒エンジンを搭載し、310馬力、229 lb-ftのトルクを発揮します。車両重量は1,135kg以下であり、パワーウェイトレシオは非常に優れていました。
しかし、この車はもともと1956年のレースシーズンに向けて開発されましたが、1955年のル・マンでの悲惨な事故をきっかけにメルセデス・ベンツがモータースポーツから撤退したため、レースに出場することはありませんでした。
その後、売却前は、1,100台以上の車両を所有するメルセデス・ベンツのプライベートコレクションの一部でした。そして、2022年5月5日、ドイツのシュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館で開催された招待客限定のオークションで、RMサザビーズによって実施され、1億3500万ユーロ(約14億2000万ドル)で落札されました。
ちなみに、今回の売却により、300 SLR Uhlenhaut Coupeは史上最高額で売却された車となり、これまでの記録を9,000万ユーロ以上も上回りました。個人購入者は、特別な機会にこの車を一般公開することに同意しています。
さらに、メルセデス・ベンツは、この売却による収益を元手に、環境科学や脱炭素化の分野における若者向けの教育および研究奨学金を提供する世界規模の「メルセデス・ベンツ基金」を設立する予定です。
アルベルト・ジャコメッティの「指をさす男」
アルベルト・ジャコメッティのブロンズ彫刻「L’Homme au doigt(指をさす男)」は、1947年に制作された高さ180cmの作品です。
ジャコメッティは、迫り来る展覧会の締め切りに間に合わせるために、深夜から朝9時までの一晩でこの彫刻を制作したと言われています。細長い体躯と伸ばした人差し指で表現されたこの作品は、ジャコメッティの最も象徴的で印象的な彫刻の一つとみなされています。
しかも、この彫刻は限定版の一部で、ジャコメッティは6つの鋳型と1つのアーティストプルーフを作成しました。クリスティーズで落札されたバージョンは、ジャコメッティ自身が手描きで彩色した唯一の作品であると考えられており、その表現力と価値を高めています。
そして、この彫刻は、売却されるまで45年間、個人コレクションにありました。2015年5月11日、クリスティーズ・ニューヨークの「Looking Forward to the Past」オークションに出品され、1億4130万ドルで落札されました。これは、落札当時、オークションで落札された彫刻としては史上最高額を記録しました。
ちなみに、「L’Homme au doigt」は、ジャコメッティの1948年のニューヨークのピエール・マティス・ギャラリーでの個展の中心となった等身大の人物像3点のうちの1点です。この個展は、ジャコメッティのキャリアにおける重要な転換期となり、彼の国際的な評価を確立する上で重要な役割を果たしました。
さらに、この売却により、ジャコメッティは美術市場で最も価値のある彫刻家の一人としての地位をさらに確固たるものとしました。
彼の作品3点がオークションで最も高額で落札された美術品のトップ10リストにランクインするなど、ジャコメッティの作品は、その芸術的な価値と希少性から、コレクターの間で非常に人気が高く、今後も高値で取引されることが予想されます。
まとめ
オークション史上最高額で落札された品々は、単なる金銭的価値を超え、芸術や文化の象徴としての重要性を持っています。特に、レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」は、2017年に約4億5000万ドルで落札され、絵画としての最高額を記録しました。この作品は、ダ・ヴィンチの技術と美学を体現しており、彼の作品が持つ歴史的な重みを示しています。
ウィレム・デ・クーニングの「インターチェンジ」は、2015年に約3億4000万ドルで落札され、抽象表現主義の重要な作品として評価されています。ポール・セザンヌの「カード遊び」も、約2億5000万ドルで落札され、印象派から現代美術への架け橋となる作品としての価値が認められています。
また、レンブラントの「旗手」や、アンディ・ウォーホルの「Shot Sage Blue Marilyn」も高額で取引され、特にウォーホルの作品はポップアートの象徴として、現代文化における影響力を示しています。パブロ・ピカソの「アルジェの女たち(バージョンO)」は、彼のスタイルの変遷を示す重要な作品であり、約1億7900万ドルで落札されました。
さらに、アメデオ・モディリアーニの「横たわる裸婦」やフランシス・ベーコンの「ルシアン・フロイドの肖像習作3点」も、アート市場での高額落札の例として挙げられます。これらの作品は、アーティストの独自の視点や技術を反映しており、コレクターや投資家にとって魅力的な対象となっています。
最後に、1955年式メルセデス・ベンツ300SLRウーレンハウトクーペやアルベルト・ジャコメッティの「指をさす男」も、アートと同様に高額で取引されることから、芸術だけでなく、デザインや自動車文化の重要性も示しています。
これらの品々は、単なる物質的価値を超え、歴史や文化の一部として、今後も人々に影響を与え続けることでしょう。オークションでの高額落札は、アートや文化の価値を再認識させる重要な機会となっています。