アンティークバイヤーのみさきです。好きな言葉は「百聞は一見に如かず」
ロンドン・ナショナル・ギャラリーでたどる西洋美術の軌跡
ロンドンで最も有名な美術館の1つです。市民による市民のための美術館として1824年にロンドンで開館されました。中世から印象派までの絵画コレクションは圧巻で、所蔵されている作品の価値は、パリのルーブル美術館、マドリッドのプラド美術館、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に匹敵します。
フェルメールの作品は2点あります。レオナルドダヴィンチ、レンブラント、エルグレコ、ゴッホ、ルノワールの名画など同じ作家でも年代ごとに作風の変化が楽しめ、美術史がよくわかる配置になっています。長椅子もたくさん置いてあるので、気に入った絵画の前でスケッチをしたり、作品やアーティストの詳細を調べたりしながら、ゆっくり鑑賞できます。
コレクションの基礎となったのは、ロイズ保険組合の発展に寄与したロシアの銀行家ジョン・ジュリアス・アンガースタインが収集していた38点の絵画。その後、何世紀にもわたって収集した2300点の名作を展示しています。これらが無料で見れるのは圧巻です。
大英博物館ほど混んでいません。館内は広いので急ぎ足で回っても3時間はかかります。数日足を運んでゆっくり見て下さい。
カフェも落ち着いていてアフタヌーンティーを楽しめます。絵画の撮影も自由です。宗教画が多いですが、芸術や美術史が好きなら、インスピレーションを得るために一見の価値がある美術館です。
見どころ
ゴッホの「ひまわり」
ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵のフィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」は、世界で最も有名な絵画作品の一つとして、多くの来館者を魅了し続けています。この作品の人気は、その歴史的・芸術的意義、感情と象徴の共鳴、文化的アイコンとしての地位、ゴッホの生涯への憧憬、そして世間と批評家からの称賛という、いくつかの重要な要素が複合的に作用しています。
「ひまわり」は1888年にゴッホがアルルで創作活動の絶頂期に描かれた連作の一部で、鮮やかな黄色と厚塗りの絵具を用いた大胆な表現が特徴です。この作品は、当時の画壇に衝撃を与え、近代美術の発展に大きく貢献しました。ゴッホの芸術家としてのキャリアを象徴する重要な作品であり、その芸術的価値は計り知れません。
また、燃えるような黄色のひまわりは生命力や情熱を象徴しており、ゴッホの内面にある苦悩や葛藤を力強い花々に投影しています。この強い感情表現は多くの人の共感を呼び、普遍的な魅力を生み出しています。
「ひまわり」はポストカードやポスターなど様々な商品に描かれ、広く知られています。そのイメージはゴッホ自身と密接に結びつき、文化的なアイコンとしての地位を確立しています。ゴッホは生前に十分な評価を得られず、苦悩に満ちた生涯を送りましたが、その死後、彼の作品は再評価され、世界中で愛されるようになりました。「ひまわり」はゴッホの悲劇的な人生とその後の名声に対する人々の憧憬を呼び起こす作品としても人気を博しています。
1924年にナショナル・ギャラリーのコレクションに加わって以来、「ひまわり」は常に多くの観客を集め、批評家からも高い評価を得ています。ナショナル・ギャラリーを代表する作品の一つとなっており、その魅力は時代を超えて多くの人々に訴えかけ、今日もなお多くの人々を魅了し続けています。
このように、ナショナル・ギャラリー所蔵のゴッホの「ひまわり」は、その美的・歴史的価値だけでなく、深い感動と文化的意義を持つ、まさに名画と言えるでしょう。ゴッホの情熱と苦悩が込められたこの作品は、見る者に様々な解釈を想起させ、いつまでも色褪せることのない魅力を放ち続けています。
この投稿をInstagramで見る
フェルメールの「ヴァージナルの前に立つ女」
ヨハネス・フェルメール作「ヴァージナルの前に立つ女」は、その卓越した技巧、絵画に込められた深い意味、そして謎めいた雰囲気で、美術愛好家だけでなく一般の人々にも広く人気を博しています。
フェルメールは「光と影の魔術師」として知られ、この作品では窓から差し込む柔らかな光が女性のドレスや髪を照らし出し、壁に描かれた風景画を鮮やかに浮かび上がらせています。この繊細な光と影の表現は、見る者を魅了し、宝石のような質感と色彩を生み出しています。
絵画には愛と貞節のテーマが込められており、乙女座が純潔と貞節を象徴する星座であることから、女性が手に持つ天秤は正義や公平さを表しています。また、背景の壁にはキューピッドが描かれた絵画が飾られており、恋愛や結婚といったテーマを暗示しています。
女性の表情は微笑みを浮かべているようにも見えますが、どこか物憂げで、その真意は見る人の想像に委ねられています。これが、彼女の感じている恋愛の喜びや未来への不安など、さまざまな解釈を可能にしています。
フェルメールの生涯は謎に満ちており、生前には十分な評価を得られずに無名の画家として生涯を終えましたが、死後200年以上経ってから再評価され、世界中で愛されるようになりました。「ヴァージナルの前に立つ女」も長い間謎に包まれており、誰がモデルなのか、なぜこのような構図なのかといった疑問が投げかけられています。これらの謎は絵画に更なる魅力を与え、見る者の興味を惹きつけています。
この作品はその美しさ、深み、そして謎めいた雰囲気によって、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。ナショナル・ギャラリーを訪れた際には、この名画をじっくりと鑑賞し、フェルメールの芸術世界に浸ることをお勧めします。
この投稿をInstagramで見る
スーラの「アニエールの水浴」
ジョルジュ・スーラ作「アスニエールの水浴画」は、その美しさ、革新性、そして深い意味合いから、多くの美術愛好家や一般の人々を魅了し続けています。この作品の魅力は、スーラの卓越した技巧、社会への鋭い視線、美術史における重要な位置、謎めいた静けさと永遠性、そして普遍的な魅力と永続的な人気によって形成されています。
スーラは点描と呼ばれる技法を用いて、光と色彩を驚くほど繊細に表現しています。キャンバスに無数の小さな点滴を置くことで、光の効果や空気感、人物の肌の質感などをリアルに再現し、当時の画壇に大きな衝撃を与えました。この革新的な技法は、モダニズム芸術の発展に大きく貢献しました。
作品では、セーヌ川のほとりでくつろぐ人々を描いていますが、その背景には煙突を吐き出す工場が描かれており、レジャーを楽しむ人々と労働する人々の対比が鮮明に表されています。スーラはこの作品を通して、当時の急速な工業化によって失われていく伝統的な生活様式への哀愁と、労働者階級の人々の生活への共感を表現しています。
「アスニエールの水浴画」はスーラが初めて大規模なキャンバスに挑戦した作品であり、点描技法を確立しただけでなく、印象派の光と色彩の表現をさらに発展させた点でも重要です。サロンの審査員によって落選したにもかかわらず、アンデパンダン芸術家協会の設立に貢献したという歴史的な意味合いも持ち合わせています。
作品は一見すると静かな風景画のように見えますが、その中には様々な謎めいた要素が潜んでいます。人物たちの表情はどこか物憂げに見え、背景の煙突は不吉な雰囲気を醸し出しています。また、光と影の巧みな表現によって、時間の流れや永遠性といったテーマを暗示しているようにも感じられます。
「アスニエールの水浴画」は、制作から130年以上経った今でも、その卓越した技巧、深い意味合い、そして何とも不思議な雰囲気によって、多くの人々を魅了し続けています。ナショナル・ギャラリーを訪れた際には、ぜひこの名画をじっくりと鑑賞し、スーラの芸術世界に浸ってみてください。
この投稿をInstagramで見る
レディ・ジェーン・グレイの処刑
ポール・ドラローシュ作「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、そのドラマチックな描写と深い感情表現で、多くの人々を魅了し続けています。この作品の魅力は、迫真の演技、卓越した技法、歴史的悲劇、再発見と修復、普遍的なテーマ、そして大衆と批評家からの称賛によって形成されています。
ドラローシュは、処刑される直前のレディ・ジェーン・グレイの表情や仕草を驚くほどリアルに描き出し、彼女の恐怖、絶望、そして信仰への揺るぎない信念が、見る者の心を深く揺さぶります。巧みな光と影の使い方によって場面の劇的な効果を高め、細部まで丁寧に描き込まれた人物の衣装や装飾品、牢屋の壁の質感などが、臨場感を感じさせます。
レディ・ジェーン・グレイは、わずか9日間しか王位に就かなかった悲劇の人物であり、16世紀のイングランドにおける宗教対立の犠牲者となり、若くして処刑されました。この作品は、彼女の短い生涯と悲劇的な結末を力強く印象的に描き出しています。
この絵画は、数十年間行方不明とされていたが、1973年にテート・ギャラリーの地下で再発見され、その後修復を経て1975年からナショナル・ギャラリーで展示されるようになりました。この再発見と修復の物語は、絵画に更なるドラマ性と魅力を加えています。
「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、権力、信仰、そして人間の命の儚さといった普遍的なテーマを扱っており、現代の人々にも深く訴えかける作品となっています。ナショナル・ギャラリーで最も人気のある作品の一つとして、そのドラマチックな描写、深い感情表現、そして歴史的意義から、多くの人々を魅了し続けています。
悲劇と美の融合が織りなすこの絵画は、見る者に忘れられない感動を与えてくれるでしょう。
この投稿をInstagramで見る
ラファエロの「アルドブランディーニの聖母」
ラファエロ・サンツィオ作「アルドブランディーニの聖母像」は、その芸術的卓越性と歴史的重要性から高く評価され、不朽の人気を誇っています。
ラファエロは、絵画を通して美と感情を捉える卓越した技巧で知られています。この作品では、聖母マリアとキリストの子を深い気品と静謐さで描いており、繊細な色調と調和のとれた構図が特徴です。これらはラファエロの写実主義と理想主義を融合させた技巧を示しており、彼の技術力の高さと芸術を通じた深い感情や精神的な物語を伝える能力を示しています。
この絵画はラファエロのキャリアにおいて、フィレンツェ時代からローマ時代への移行期に位置づけられ、ルネサンス芸術の発展とラファエロ自身の進化を理解する上で重要です。彼が当時の他の巨匠たちからどのように影響を受け、受け継いだテーマや様式をどのように発展させたかを示す代表的な例とされています。
母性と神性というテーマはこの絵画の中心であり、聖母子の描写はキリスト教美術における強力な象徴です。ラファエロによるこれらの人物の描写は、親しみやすさと高尚さを併せ持ち、多くの人々にとって精神的に豊かな体験を提供しています。
また、この絵画はその美的資質によっても賞賛されており、バランスの取れた構図や穏やかで表情豊かな人物の顔が特徴です。ラファエロの柔らかな線と細やかな表情の使用は、絵画に親密さを加え、広い一般大衆にも魅力的な作品となっています。
ラファエロの作品は、数え切れないほどの芸術家たちに影響を与え、世界中で賞賛を集め続けています。「アルドブランディーニの聖母」は、その技術的な輝きと感情的な深みの融合により、ルネサンスの巨匠の一人としてのラファエロの名声に貢献しています。ナショナル・ギャラリーのような著名な施設に所蔵されていることで、その知名度はさらに高まり、美術ファンだけでなく、気軽に訪れる観光客の間でも人気を博しています。
この投稿をInstagramで見る
ターナーの「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー作「ポリュペムスを嘲笑するユリシーズ」は、ナショナル・ギャラリーの中でも特に人気のある作品の一つです。その人気の理由は、芸術的卓越性と革新性、歴史的・文学的意義、象徴的で感情的な深み、視覚的なインパクトと色の使用、そして画家の評判と遺産という5つの重要な要因に集約されます。
ターナーは光と色彩の卓越した表現で知られており、この作品では革新的な照明の使い方によって、ホメーロスの『オデュッセイア』の一場面をドラマチックに描き出しています。ターナーの巧みな技術は、場面の感情的なインパクトを最大限に高め、説得力のある視覚的スペクタクルを生み出しています。
本作はホメーロスの『オデュッセイア』の有名なエピソードを描いており、高い文化的・教育的価値を持っています。ターナーは古典的な主題にロマンティックで現代的な解釈を加えることで、歴史的・神話的なテーマに関心を持つ鑑賞者に訴求しています。
ターナーの描写は、勝利、自由、専制政治に対する人間の反抗という普遍的なテーマを探求しています。ユリシーズとその部下たちがポリュペムスの魔手から逃れる劇的な場面は、自由と圧制的な力に対する勝利を求める人間の闘いを象徴しており、作品に感情的な力強さと親しみやすさを与えています。
ターナーの鮮やかな色彩と光と影の劇的なコントラストは、この作品を視覚的に印象的なものにしています。光り輝く日の出と、登場人物や海の詳細な描写は、見る者を情景に引き込み、忘れがたい視覚体験へと誘います。
ターナーはイギリスで最も有名な画家の一人であり、”光の画家”として知られています。ロマン主義運動の立役者としての名声と、風景画における革新的な技法は、彼の作品の人気を支える重要な要素です。「ポリュペムスを嘲笑するユリシーズ」はターナーのキャリアの中でも中心的な作品とされ、その芸術的・技術的な功績が称賛されています。
これらの要因が複合的に作用し、「ポリュペムスを嘲笑するユリシーズ」をナショナル・ギャラリーの中でも特に人気のある作品へと押し上げています。光と色彩の芸術的な表現、豊かな歴史的・文学的背景、深い象徴性、圧倒的な視覚インパクト、そして英国を代表する画家の名作としての価値。これらの要素が織り成す魅力が、時代を超えて多くの人々を魅了し続けているのです。
この投稿をInstagramで見る
レオナルド・ダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」
ナレオナルド・ダ・ヴィンチ作「岩窟の聖母」は、世界で最も人気のある絵画の一つとして知られています。その名声は、芸術性、歴史、精神性、文化的影響など、様々な要素が深く絡み合った結果と言えるでしょう。
「岩窟の聖母」は、レオナルドの卓越した技術と革新性を存分に味わえる作品です。光と影の繊細な描写、人物の感情表現、そして革新的なスフマート技法による奥行き感と空気感は、当時の芸術表現を大きく飛躍させました。特に、聖母マリアや幼子イエスキリストの慈愛に満ちた表情や、洗礼者ヨハネや天使たちの活き活きとした動きは、見る者を魅了してやみません。
ロンドン版とパリ版と呼ばれる2つの「岩窟の聖母」が存在することは、絵画の歴史における謎の一つです。制作年代や作者、構図の違いなど、様々な議論がされており、その真相はいまだ解明されていません。この謎めいた背景は、作品に更なる魅力を与え、鑑賞者の想像力を掻き立てます。
聖母マリア、幼子イエスキリスト、洗礼者ヨハネ、天使たちの配置や身振り手振りには、深い宗教的意味が込められています。無原罪の御宿り、キリストの神性、聖母マリアの役割などを暗示しており、鑑賞者は作品を通して精神的な探求へと導かれます。
「岩窟の聖母」は、調和のとれたピラミッド構図、自然な動きと表情を持つ人物像、そして奥行きのある空間表現など、ハイ・ルネサンス様式の理想を体現しています。ルネサンス期の人間讃歌と理想的な美の追求が、この作品を通して鮮やかに表現されています。
数少ない現存するレオナルドの大作である「岩窟の聖母」は、美術史において重要な位置を占めています。その革新的な表現技法は、後の芸術家たちに多大な影響を与えました。また、レオナルド自身の比類なき名声と、作品にまつわる謎めいた逸話も、その魅力を高めています。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「岩窟の聖母」は、芸術性、歴史性、精神性、文化性という様々な要素が織り成す、まさに不朽の名作と言えるでしょう。ナショナル・ギャラリーを訪れる際には、ぜひこの絵画にじっくりと向き合い、その奥深い魅力を存分に味わってみてください。
この投稿をInstagramで見る
基本情報
名前 | ナショナル・ギャラリー、ロンドン The National Gallery, London |
開催日 | 毎日 |
開館時間 | 10:00~18:00(金曜は10:00~21:00) |
入場料 | 無料 |
所蔵作品数 | 13世紀から20世紀初期のヨーロッパの絵画2,300点以上 |
住所 | Trafalgar Square, London WC2N 5DN |
詳細 | 公式ホームページ |
地図
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、イギリスの中心地・トラファルガー広場にあります。以下4つの駅からアクセスできます。
・チャリング・クロス(Charing Cross)駅から徒歩3分
・レスター・スクエア(Leicester Square)駅から徒歩5分
・ピカデリー・サーカス(Piccadilly Circus)駅から徒歩7分
・エンバンクメント(Embankment)駅から徒歩7分
【1日】日本語公認ガイドがご案内するロンドン市内プライベート観光
ナショナル・ギャラリー、ロンドン -The National Gallery, London
総評
ロンドンに行ったら行くべき美術館。印象派の絵画は圧巻です。館内はとても広く、各部屋の装飾も素晴らしいです。お土産屋さんも充実しています。絵画好きなら1日滞在がおすすめ。平日は意外と空いています。